防衛省が上陸作戦(侵略戦争)の訓練を開始

防衛省が上陸作戦(侵略戦争)の訓練を開始(資料2011/10更新)

「離島奪還上陸作戦」という「中国・朝鮮侵略戦争訓練」

(一)2011年1月、防衛省で3日間にわたり海兵隊総司令部(ワシントン)で作戦を統括する幹部16人が協議した。これは「南西諸島防衛」の日米協力体制を構築するために日帝・防衛省から呼びかけた協議であることが判明している。そして2月には米西海岸サンディエゴで日米共同訓練・「離島奪還上陸訓練」が行われている。

(二)3・11後の実戦的な「トモダチ作戦」を「頂点」として、2010年12月3日から10までの8日間、日米44000人、航空機400機、艦艇60隻が参加した過去最大の対中国戦争を想定した日米統合実動演習がおこなわれている。演習では、迎撃ミサイルPAC3“普天間”配備、「離島進攻への対応訓練」や「対潜水艦作戦」を実施している。日米のイージス艦(海上配備の迎撃ミサイルSM3搭載)が日本海に展開(演習コード“KeenSword”・鋭い剣)。海自護衛艦が防衛する米海軍強襲揚陸艦・エセックス(海兵隊を一挙に上陸させる)や原子力空母G・Wが参加。日米統合実動演習は1986年に開始以来10回目である。

(三)この日米統合演習に先立つ2010年10月、「国境線の防衛」訓練とする陸自の「上陸作戦」が九州地方の離島で行われている。防衛力の軸足が北方から南方に移行するのにあわせた実戦的訓練の強化である。

中国は東中国海で海洋資源の開発・確保の動きを強化し、海軍力の増強にあわせ、昨年4月には中国海軍が過去最大の艦隊(10隻)で東中国海を通過し、太平洋側に出る軍事展開を行い海軍の活動海域を拡大している。これにあわせた日帝の部隊訓練強化である(日米共同訓練と独自訓練)。その最前線が長崎県・佐世保を拠点とする「離島防衛専門部隊」。そして訓練の強化と同時に先島諸島への陸・空自部隊配備の準備が推し進められている。防衛省は、与那国島基地建設用地取得費として24年度概算要求に15億円を計上している。

(四)実施されている陸自・普通科連隊の「離島奪還上陸作戦」

そもそも戦時における「上陸作戦」とは、文字通りの総力戦である。空軍や空母艦載機の空爆による制空権の確保、そして海軍艦隊による制海権と艦砲射撃による一斉攻撃で敵地前線配置部隊の大半を殲滅し、反撃能力を抑止した後に、陸戦隊や海兵隊が「上陸作戦」を敢行するのが軍事の世界では常識である。日帝・陸自が「離島奪還」という「上陸作戦」を実施しているというこの事実は。決して軽視できない問題である。訓練の概容は次のとおりで、特殊部隊によるゲリラ戦を想起させる内容でもある。

(1)2010年10月長崎の「五島列島」にある人口3000人の小さな島でシーズンオフの海水浴場を利用し、暴風波浪警報の中、陸自普通科連隊が独自の上陸作戦を強行した。島民は「難民の人が暴風雨で打ち上げられているのかと心配して見にきたら自衛隊の訓練でした」と驚いている。地元の自治体には「陸上自衛隊による捜索活動訓練等の実施」として届けられている。実施部隊の届出は「西部方面普通科連隊 第3中隊」である。

訓練内容は、暴風雨を突き、兵士を乗せた4隻のボート(RHIB)が沖合500mまで進出・停止し、装備した兵士が二人1組(数組)が荒れた海に入り、陸地に泳ぎ着き(10分くらいで)、陸地の安全を確認し、海上に停止中の部隊に合図を送り部隊を上陸させる、という訓練である。これを全員が何度も繰り返す。「専守防衛」から「動的防衛力」への転換がこの「上陸作戦」の中に明確に現れている。

西部方面隊の陸自訓練で重点が置かれているのが水泳であるが、訓練は「戦闘水上生存術」という重装備での水泳訓練へと強化する。小銃を携行し、鉄兜に10キロの装備を背負っての水中訓練で、海から陸に上陸する訓練である。侵略軍隊の上陸作戦を成功させることが部隊の最大の任務。水泳訓練のノルマは1日5時間以上。これまでの陸自には水泳訓練はなかった。泳げないということで陸自を選んだ兵士もいるが、上陸作戦の大前提として、重装備のまま海中で生存し、隠密裏に泳ぎきるという訓練が強化されている。訓練はすさまじい。水中で失神寸前の溺れる兵士に対しても訓練は強行(続行)されている。

※ 訓練は文字どおりの「いじめ」と化している。

(2)この部隊は、長崎県佐世保市に駐屯(陸自・相浦駐屯地)する「西部方面普通化連隊」。隊員600人。精鋭を集めたレンジャー部隊である。「敵に奪われた島を奪回するという任務」の「上陸作戦」の専門部隊。担当地域は長崎の対馬から沖縄の与那国島までの海域にある全ての離島とされている。有事の際、最初に動く即応部隊だ。この部隊は、訓練した「上陸作戦」を他の部隊(西普連)へも拡大する任務をもっている。

周知のとおり現在、陸自が配備されているのは沖縄本島まで。最西南の与那国島(町長・外間守吉、人口1600人で「国境の島」と言われている)への陸自配備の具体化である。地元では受けいれ派と「自衛隊誘致断固反対」(与那国島改革会議など)の反対派に分岐している。

※    現在(昨年10月段階)、配備への折衝役は上尾(あがりお)秀樹陸将補(沖縄地方協力本部長)。自治体TOPとの直接対話で強行を図っている。

※ 石垣島(八重山)も部隊配備の候補地として上がっているが、旧日本軍への怒りが根強く残っている。上尾自身も幹部制服では島民の前に登場できない。中山義隆市長は、「部隊の誘致には動かない」と表明している。

自衛隊は人員削減の方向で進んでいるが、中国との緊張激化―南西諸島への新たな配備を契機に陸自強化も策動している。

 

(3)2010年12月、霧島演習場(えびの市)での日米共同演習。1998年以来2回

目の共同演習。沖縄駐留の米海兵隊230人と陸自(都城駐屯地・普通科連隊)550人が参加。現場一線の陸自と海兵隊が作戦で連携し、活動できるようにする共同訓練である。米軍がイラク戦争で実際に行った負傷者の救護訓練など実戦演習である。6日間の機能別訓練―射撃訓練・物資輸送・「人道支援」訓練と2日間の総合訓練が行われている。爆破訓練、夜間偵察訓練など軍事のノウハウと連携を実戦・実働演習をとおして日米兵士の共同作戦を強化する目的で訓練されている。釣魚台での海保による中国漁船衝突事件、ヨンピョンド砲撃事件など中国・北朝鮮への侵略戦争に向けた日米共同作戦の相互運用を高める目的の実戦演習である。

※ 「日米の相互の違いを認識しあうのが目的」米海兵隊広報官。

※ 「いろいろな場面でお互いの部隊をよく知って連携しながら活動ができるようになるのが目的」陸自第8師団司令部・井上広報室長。

共同演習に対し地元の畜産農家は、爆発音による影響として、「演習で一番被害が大きいのは牛・豚で、流産と死産が多くなる」と怒りを現している。

(4)日米共同指揮所演習で九州沖縄戦シナリオ

① 防衛省は、2011年1月におこなった日米共同方面隊指揮所演習(ヤマサクラ)に南西諸島防衛を初めて盛りこんだ。日米両軍は2010年12月、上記、離島奪還実動演習を行っているが、「山桜」演習は部隊を動かさずにコンピュータを数百台繋げて行う指揮シミュレーション訓練。

1月に行われたヤマザクラの想定シナリオは九州―沖縄を仮想戦場として指揮・訓練が行われている。ヤマサクラは、中国海軍を東中国海に封じ込める「南西の壁」の概念を持ち出し、奄美大島などへの部隊展開や奪回作戦の図上演習をおこなっている。

 ヤマサクラは、陸上自衛隊に5個ある方面隊が毎年、持ち回りで米陸・海兵隊との間で行う図上の演習。今回は九州・南西諸島防衛を担う西部方面隊(熊本市)と太平洋陸軍司令部(米ハワイ州)、第一軍団(米ワシントン州)などが担当しておこなわれた。

② 5年前、西部方面隊が行ったヤマサクラは離島防衛を想定せず、九州に上陸した“敵”を日米共同で対処する訓練であった。今回は中国海軍の軍事力強化を背景に陸自で検討されていた対中国戦略「南西の壁」を援用している。

 「南西の壁」は情勢緊迫時に海自や米海軍艦艇の航行ルートを確保するため、中国海軍を東中国海に封じ込める対処行動を意味し、地対艦ミサイル部隊などを離島に機動展開させる。

 1月のヤマサクラは「中国が九州に上陸するとともに南西諸島へも押し寄せる」というシナリオが検討され、離島防衛が専門の西部普通科連隊や米海兵隊第3師団(沖縄県うるま市)による奄美大島への緊急展開などを図上演習している。

 沖縄県で陸自が部隊配備しているのは沖縄本島だけ。宮古島、石垣島には配備していないが、演習当時、陸自は、「今回は沖縄の離島(南西諸島)への展開は想定していない」としているが、昨年12月、本年2月の米西海岸における日米合同の「離島奪回作戦」の実施を見ればヤマサクラでの離島奪回作戦(上陸作戦)の図上指揮作戦が行われていることは明白である。

 これらが陸自の南西諸島配備に向けた訓練動向である。