会報 第75号

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11・19の大爆発で岸田政権打ち倒し社会を変えよう!        労働者・兵士は国境・国益を越えて団結しよう!

東京西部ユニオン(元自衛官) 杉橋幸雄

●ウクライナ戦争の長期泥沼化と朝鮮半島、台湾・中国をめぐる軍事対立激化の下、帝国主義の100年におよぶ残虐な中東植民地化攻撃を根底的に打ち破るパレスチナ民族解放・革命戦争の新たな闘いがついに始まったただ中で11・19国際反戦集会が開催されようとしています。ウクライナ・東アジア・中東において世界戦争が火を噴きはじめ、これに対する怒りの反戦闘争が全世界で爆発しつつある今こそ、帝国主義戦争を内乱に転化すべくパレスチナ連帯をかけ国際連帯20年の11・19国際反戦闘争の大成功を何としても勝ち取ろう!!

●第1次大戦以来の英・仏帝国主義による中東分割支配、さらには第2次大戦後の米帝主導の、そしてソ連スターリン主義の裏切りによる「イスラエル建国」を通じ残虐極まる民族抑圧と侵略戦争の繰り返しに対し、何世代にもわたって命がけで闘ってきたパレスチナ・アラブ人民の「10・7蜂起」を転換点として中東をはじめ世界各地で、そして日本においても「パレスチナ連帯」の労働者階級の怒りの反戦闘争が爆発しています。瓦解しつつある帝国主義とスターリン主義の戦後世界支配体制を根底から打ち砕く新たな民族解放・革命戦争が中東から全世界に波及し、もはや戦争と金儲けを事とする一握りの支配階級にこの大激流を押しとどめることは出来ません!

●しかしだからこそ、没落米帝を後ろ盾にイスラエルはガザを完全包囲し、「地上侵攻」の準備を済ませたうえで「人道物資」としてガザに水・食糧・医薬品などは一部搬入させるも「燃料」だけは搬入させず、ガザ包囲の下で空爆を何百回も繰り返しガザ民衆を6千人以上虐殺しています。その破壊力は1発で5階建てビルを吹き飛ばす威力です。まさに「ジェノサイド」です。にもかかわらず、米帝は国連での「停戦決議(案)」に拒否権を発動し、「攻撃に関し、人道上の一時停止はあっても停戦はありえない」と言いきり、イスラエルをバックアップすべく地中海と中東に2個空母打撃群や米兵約2000人を展開しています。まさに世界戦争を仕掛けているのは米帝に他なりません。こうした事態に、イスラエルを包囲するように中東最大の武装勢力と言われるレバノンのヒズボラやイランまでもイスラエルに対する攻撃を始め、米帝は激甚反応し、中東が世界戦争の新たな発火点になりつつあります。絶対に見過ごすわけにはいきません!

●全国・全世界で爆発する反戦闘争に追い詰められ、グラグラの岸田政権はここにきて「所得税減税」や「低所得者への給付」などと言いだし、労働者民衆を騙して中国侵略戦争の為の大軍拡と改憲を狙っています。しかし、もう誰もだまされません。東京―ソウル―世界を結ぶ11・19国際反戦闘争の大爆発で岸田を打倒しよう!!
 世界の労働者・兵士は今こそ国境・国益をこえて団結しよう!パレスチナ虐殺を今すぐやめろ!ウクライナ戦争―中国侵略戦争絶対阻止!全世界の労働者と反戦兵士は団結して反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命に突き進もう!! (10月26日、記)

木更津・陸自オスプレイVー22をただちに撤去せよ!        イスラエルのパレスチナ人民への虐殺許すな!

動労千葉を支援する会・木更津

⒈ 木更津オスプレイV―22が沖縄県・新石垣島空港に飛来
 10月19日、ついに木更津に駐屯する陸自第1ヘリコプター団のオスプレイV―22が沖縄県に着陸。その目的は、対中国侵戦争を想定し、「離島防衛」を名目に陸上自衛隊と米海兵隊が大規模共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」に参加するためはじめて沖縄に着陸した。
 「レゾリュート・ドラゴン23」は、陸上自衛隊5000人、米軍1400人、日米総勢6000人を超える大規模訓練です。陸上自衛隊オスプレイV―22が対中国戦争を念頭にして、「南西シフト」(「離島奪還」と称して敵地に乗り込むもの)の先頭に立つと言うことです。同時に木更津飛行場が、再び出撃拠点になる情勢が到来した。
 陸自オスプレイV―22が沖縄県に飛来することは初。沖縄県・玉城デニー知事は「オスプレイの墜落事故が相次ぐ中、陸自オスプレイを使用する日米の大規模な訓練の実施は、県民に不安を生じさせる」と表明。また「台湾有事の軍事的影響が南西諸島や九州に波及した場合の対処力と抑止力の双方を日米合同で向上させる狙いがある」(沖縄・名桜大志田准教授)と。沖縄を再び戦場にしてはならない。

[沖縄新石垣空港に着陸したオスプレイV-22。10月24日撮影。]

⒉ 陸自オスプレイV―22が戦争を名目に静岡での訓練中に緊急着陸
 オスプレイはどのようなしろものか。周知のとおり開発時から墜落事故をくりかえす構造的欠陥機だ。
 木更津駐屯地所属の陸自オスプレイV―22が8月31日、静岡県焼津市の航空自衛隊静浜基地に緊急着陸。緊急着陸とは、これ以上飛ぶと墜落するので、それを避けるための「緊急避難」的措置という。そのわずか4日前の8月27日、オーストラリアで米海兵隊オスプレイMV―22が墜落し3人が死亡、5名が重傷。
 今回、静岡でのV―22オスプレイの緊急着陸の原因は何か。報道によれば、ギアボックス(主翼の内部にシャフトを通し、左右のエンジンを連結する中央部分)に金属片が出来たという。防衛省は「(オスプレイの)設計上の問題ではなく、運用上一定程度生じる部品の摩耗」なので、V―22オスプレイの運用を続けると言う。 
 思い起こせば、V―22が「暫定配備」として木更津駐屯地に飛来したのは2020年7月10日。その1号機が「潤滑油に金属粉が混入した」ため飛行を6ヶ月中止して、点検に入った。オスプレイは古かろうが新しかろうが、ギアボックスに欠陥があることが証明されている。
 2022年6月にアメリカで海兵隊員5名が死亡した墜落事故は、エンジンとプロペラをつなぐ装置で「ハードクラッチ・エンゲージメント」(エンゲージメントとは焼き付きという意味)が原因と、米軍は結論を出した。すなわち、オスプレイは構造的な欠陥があることを認めた。
 アメリカやオーストラリア、ヨーロッパで頻発する、オスプレイの墜落死亡事故と今回の静岡の「緊急着陸」とどこが違うというのか。こうした事故は、全て、世界戦争のための訓練中におきている。木更津V―22オスプレイの飛行をただちに中止せよ!欠陥機オスプレイいらない! 佐賀にもいらない!日本と世界のどこにもいらない。木更津オスプレイの「暫定配備」を撤回せよ!

[オスプレイの駆動系メカニズム。両エンジンから伸びたシャフトの中央にあるのがギアボックス]

⒊ イスラエルのガザ空爆、パレスチナ人民虐殺許すな!
 10月7日に始まった中東パレスチナ戦争は、75年におよぶアメリカやイスラエルによるパレスチナ人民に対する、領土強奪と虐殺・迫害、「天井のない監獄」と言われる極限的封じ込めに対する止むにやまれぬガザ・パレスチナ人民の戦いです。
 230万人もの人々を壁の中に封じ込め、水・食料・燃料・医薬品など一切をストップさせるイスラエルの行動は、パレスチナ人民全てを抹殺しようとしている。
 今日、ウクライナ戦争はより長期化・泥沼化し、戦争の火の手はヨーロッパから中東へと飛び火した。
 アメリカは中国に対して、「台湾有事」「中国の南西諸島進出」を理由に対中国戦争を構えています。ウクライナ・中東・アジアでの3正面での戦争が火を噴く第3次世界戦争情勢が一気に加速している。「レゾリュート・ドラゴン23」での木更津・陸自オスプレイV―22の参加はそうした戦争に日帝・岸田政権どっぷりとのめり込んでいくことです。

⒋ いつ墜落するかわからないV―22オスプレイに搭乗する自衛隊兵士と全自衛官の皆さんへ
 自衛官自身が熟知しているようにオスプレイV―22は米海兵隊オスプレイMV―22と構造上全く変わりはない。22年3月ノルウェーでの墜落事故での5名死亡、同6月米カルフォルニアでの墜落事故で4名死亡、そして今年8月オーストラリアでの墜落で3名死亡。欠陥機オスプレイの飛行継続などあり得ない。今すぐ飛行を中止し、搭乗を拒否しよう!
 8月31日の木更津オスプレイV―22の緊急着陸は第1ヘリコプター団輸送隊の全自衛官に墜落と死の危険が迫っているということだ。労働者は自衛官が戦場で他国の兵士を殺し、自衛官が戦場で殺されることを一切、望まない。兵士は軍服を着た労働者としてわれわれの仲間だ。ともに帝国主義を打倒し、戦争と人民の大虐殺、労働者・兵士の搾取と命を平然と奪うことでしか延命できない今の社会を根底から変革し、つくり変えていく仲間です。輸送隊員や全自衛官の家族も誰一人として自衛官の死を望んではいない。
 極めて危険なオスプレイに搭乗する義務はありません。そもそも本来、訓練とは兵士と部隊を強化するものだ。その訓練で自衛官・兵士の命を奪うような兵器や軍隊は、それ自体が矛盾し、「欠陥」している。それが自衛隊であり、帝国主義軍隊だ。オスプレイへの搭乗や整備、他国への戦争に向け銃を握ることや治安出動命令を拒否しよう!私たちは皆さんとともに闘います。

[10・1空母母港化50年弾劾横須賀闘争]

全国で地方自治体の       戦争動員協力行政機関化を阻止しよう

戦争・改憲阻止!大行進運動・川崎 倉持嘉之

自衛隊への住基台帳データー提出は、国家総動員体制構築の一環
 岸田首相は、「外交には裏付けとなる防衛力が必要」とし、「今後5年間で防衛力を緊急的に強化」(2023年3月26日防衛大学校卒業式における訓示)をするとし、自衛隊の南西拠点化、敵基地攻撃兵器の保有など、戦争国家化へ突き進んでいる。そのための国家総動員体制構築の一環として、地方自治体を戦争遂行を担う行政機関に変質しようとしている。

「赤紙」復活を許すな
 旧陸軍の招集令状は、陸軍省が作成した動員計画に基づき連隊区司令部で対象者を指定して発行され、警察署で保管され、動員令が発令されると役所の兵事係が応召者本人に手交した。召集令状には召集に応じなければ罰せられる旨明記され、受取人が受領日時を記入、捺印した受領証を提出させ、役場で「召集令状受領綴」に保管されていた。戦前の役所は天皇の官吏組織であり、天皇のために人民を戦争動員する地方の徴兵機関であり、侵略戦争遂行にとって死活的な役割を果たしていた。
 戦後憲法のもとでは市町村役場は地方自治体となった。これまで自衛隊は、公開されていた住基台帳から募集対象者を転記していた。市町村役場は、一般の利用者と同様に自衛官にも住基台帳を公開していたに過ぎず、自衛隊員募集を担ってはいなかった。
 現在、全国の半数ほどの自治体が、自衛隊の要求する募兵対象者を住基台帳から抽出した名簿を作成し、そのデーター(電子データやタックシール)を自衛隊に提出している。データベース化された住基台帳からの名簿作成は一瞬のうち完了する。
 しかしこれは、地方自治体が住民を戦争動員する行政機関になり、自治体職員が「赤紙」の手交を強制されるようになるという、重大な問題を内在している。


 
帝国主義戦争と募兵は、革命の問題
 自衛隊ではセクハラ、パワハラが相次ぎ、死傷者がでる兵士の反乱が発生している。自衛隊が戦争する軍隊へと変貌しようとしていることが根本原因。
 2018年に任期制の自衛官候補生の応募者数はこの10年で3割も減少。防衛省は、「どれだけ高度な装備品を揃えようと、運用する人材の確保がままならなければ、防衛力を発揮することはできない」(有識者検討会報告書」2023年7月)と危機感を顕わにしている。
 膨大な核兵器体系、世界に展開する空母打撃群など圧倒的な軍事力を誇る米軍は、戦闘には勝利できても戦争には敗北し続けている。侵略戦争の不正義性、米軍兵の死傷によって軍隊内の反乱や反戦闘争が爆発し、国内支配体制が崩れ、革命的危機に直面して戦争遂行能力を喪失して敗北している。ベトナム、アフガンの敗戦がそれであり、ウクライナ戦争や中東侵略においても同様の道に突き進んでいる。中国侵略戦争は帝国主義世界を根底から覆す未曽有の事態となる。

防衛省・自衛隊が直面している事態の本質は同じ
 岸田首相は戦争の危機を煽り大軍拡と戦争国家化を強行しているが、それは自衛隊員を戦場に投入することになる。
 既に1992年以来の自衛隊海外派兵で死傷者や自殺者が多数発生している。
 中国侵略戦争へ突き進めば、朝鮮―アジア諸国の人民の決起が必ず爆発する。開戦すれば一挙に国内の人民の内乱的決起と自衛隊=軍隊内の反乱によって、階級支配は崩壊的危機に直面する。

帝国主義軍隊化と国民の戦争動員が革命に道を開く
 資本家のために人を虐殺し、己が殺されるのは誰も望まない。戦前の徴兵制は、拒否すれば、本人と家族を生きられなくするという、国家の全機構を総動員した暴力、弾圧によって維持されてきたに過ぎない。戦争は階級対立の最大の爆発要因であり、国民の戦争動員は国民の武装につながり、それは暴力革命に直結する。
 帝国主義は世界戦争を不可避とするが、戦争そして軍隊が世界革命に結びつくという根本矛盾から逃れられない。
 ウクライナ戦争やパレスチナ戦争に関する世界各国のニュースで明らかなように、戦争は、全世界での内乱的決起を生起させている。世界で、そして日本でも侵略を内乱へ!が現実になっている。開始された全世界の人民の決起で、再び世界戦争が世界革命に転化する過程に入っており、世界革命の過渡期が止揚されようとしている。
 いうまでもなくこの大前提には、堅忍不抜の革命党の建設とプロレタリア階級の圧倒的組織化、帝国主義軍隊の解体と兵士の獲得による軍隊の革命化がある。

地方自治体の自衛隊募兵の協力に反対する反戦決起が高揚
 2019年、前首相の安倍晋三は自民党大会で「『都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している悲しい実態がある。この状況を変えよう。憲法に自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう』と発言し、これを機に、地方自治体の自衛隊への住基台帳データー提出への圧力が強められた。
 しかし、市民に公表せずに進めてきた自治体の募兵協力が、改憲強行を策した安倍発言によって公然化し、改憲・戦争に反対する全国の労働者・市民の広範な反戦決起が始まった。
 2023年6月、浜田防衛大臣は、「…防衛省に…情報を提供いただいている地方公共団体の名称を公にすると、当該地方公共団体との信頼関係が損なわれるおそれがあることから、公表を差し控えていることを御理解いただきたい…。」(防衛省記者会見)と発言せざるを得ない状況に陥っている。
 神奈川県の場合、2022年10月、県内33市町村のうち、自衛隊に住基台帳のデーターを提供しているのは7市町の約2割に過ぎない。11市町村は自衛隊が求める抽出対象者一覧すら作成していない(「朝日新聞」2022年10月31日記事要旨)。そして、横浜市をはじめ自治体労働組合での反対署名の取り組みが始まっている。
 川崎市の福田紀彦市長は、2017年から自衛隊に住基台帳データーを提出し、自衛隊への個人情報の提供を望まない場合の「除外申請の手続き」も認めないという強硬派。
 戦争・改憲阻止!大行進運動・川崎は、市当局に対して自衛隊への住基台帳データー提出中止を要求する申し入れを行い、駅頭での街宣、住民へのビラ入れ、そして労組への働きかけなどを活発におこない、新聞にも度々報道されている。10月16日には3度目の申入書を提出し、記者会見を行った。そして10・29高山俊吉弁護士を招いた反戦集会を武蔵溝ノ口で開催するなど労働者・市民の反戦決起が始まっている。
 米中戦争―世界戦争情勢下、戦争を内乱に転化する反戦闘争の本格的な闘いはこれからだ。その一環として全国で地方自治体の戦争動員協力行政機関化を阻止する闘いを推し進めよう!

対中国戦争切迫下の       北海道の自衛隊員

北海道  鈴木潤

 ウクライナ戦争は泥沼化し、イスラエルの暴虐に対するパレスチナ人民の怒りがハマスの武力蜂起として爆発した。アメリカは起死回生を期して中国侵略戦争を身構え、岸田政権はそれとの一体化を決断している。沖縄・南西諸島を最前線基地化し、全国の自衛隊を投入するだけではない。昨年12月の防衛3文書に沿って敵基地攻撃能力の保有を急ぐ。防御より先制ミサイル攻撃なのだ。こうした情勢は自衛隊に大変化をもたらしている。北海道の現状を報告する。

「中国と闘う覚悟」を求める

 昨年5月の防衛省の文書「自衛隊の鉄道輸送」はJR函館線・函館―長万部間の貨物路線存続を求める。「台湾有事」を見すえ、ウクライナ戦争で双方が鉄道輸送に依拠していることを例に有事の鉄道輸送の重要性を説く。それには本道の陸上自衛隊2個師団・2個旅団全部が陸海空の移動手段で日本列島を南下する図がある。
 2021年9~11月の陸自中心の10万人大演習は戦争準備の集約点だった。沖縄・九州への迅速移動に加え、戦闘準備のスピード化が狙い。以降は、そこでの問題点の克服に必死だ。
 昨年12月の防衛3文書の「防衛力整備計画」は道内の陸自を「統合輸送能力により、迅速に展開・移動させる」と明記。だが自衛隊の輸送能力は脆弱で、米軍の協力はもちろん、民間や自治体も動員する。ただし演習ではなく戦争だと法的な強制力に加え、道義上の正当性も問われる。内閣の支持率30%以下では、労働者動員はもちろん、隊員に死ぬ覚悟を求めることは困難だ。
 日米両軍は、自衛隊の領域横断作戦と米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)を結合した連携EABOなる戦術方針に基づき、道内や東北各地の演習場を離島に見立て移動訓練を繰り返している。道内の広大な演習場は全国自衛隊の演習場とされ、陸自は南西諸島へ緊急展開する「機動運用部隊」を訓練している。日米共同、自衛隊単独を問わず大規模演習が続いている。
5月から10月だけをみても
●5月23日~6月16日、矢臼別と上富良野の演習場で大規模訓練(東京都の第1師団と旭川市の第2師団の計約2千人)。
●6月29日~7月31日、北海道大演習場(恵庭市、千歳市など)で実動対抗演習(名古屋市の第10師団と札幌市の第11旅団の計約1600人)。
●8月21~27日、北海道大演習場で総合戦闘力演習。陸海空に加え領域横断作戦として宇宙やサイバーの技術も駆使(道内全4師団・旅団の隊員1万2千人)。
●9月14日~23日、矢臼別演習場で陸自と米陸軍による日米共同訓練「オリエント・シールド23」(北部方面隊など約2300人、米陸軍約1200人)。
●9月26日~10月4日、空自千歳基地を拠点に日米共同訓練(空自第2航空団=千歳市のF15戦闘機8機程度、米軍・三沢基地のF16戦闘機12機程度と嘉手納基地の早期警戒管制機E3G)。
●9月28日~10月15日、然別演習場や矢臼別演習場で陸自道外部隊が大規模演習(伊丹市の第3師団と青森市の第9師団の計約2400人)。
●10月14日~31日、道内と九州、沖縄県で陸自と米海兵隊との共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23(後段)」(陸自約2800人、米側約1400人)。前段は7月に沖縄と熊本で実施。
 他の部隊別訓練で6月、第1旅団第10即応機動連隊(滝川市)の男性陸士長が、札幌市の演習場で訓練中に小銃を持ったまま行方不明に(翌日に保護)。レンジャー訓練中にはぐれたという。岐阜市日野基本射撃場での発砲事件の直後で大騒ぎに。
 相次ぐ演習、長びく出動、巨大化する準備、激しさを増す訓練で現場は疲弊している。

[10・7パレスチナ・ガザ蜂起。分断の壁を爆破・突破し、イスラエルの戦車を奪取した。]

先制攻撃へ 防衛装備より攻撃装備増強

 防衛3文書で「道内の陸自に多い戦車は現有600両から300両に、火砲は現有500門から300門に減らす」との方針を維持する代わり、敵基地攻撃能力の構築に向けて計画するスタンド・オフ・ミサイルや高速滑空弾の道内配備が検討されている。
 防衛省外局の防衛装備庁が千歳試験場(ミサイルエンジンの性能試験を行う国内最大規模の施設)で、国産長距離ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の開発試験を進めている。18年度に開発に着手した最新鋭のスタンド・オフ・ミサイル「島嶼防衛用新対艦誘導弾」の射程は2千㌔で中国内陸部の大半が射程内。敵のレーダーを回避するステルス性や防御兵器の照準を回避する高機動性を備える。空自千歳基地・陸自東千歳駐屯地の近くに建設される半導体開発・生産拠点ラピダスは、1発辺り1千個以上の半導体を使う精密誘導ミサイルの開発と無縁ではない。
25年度、白老駐屯地(白老町)や近文台分屯地(旭川市)など道内6カ所の陸自補給支処に弾薬を補給する火薬庫が増設される。敵基地攻撃能力のための長距離ミサイルの保管を想定。こうした動きは沖縄に限らず全国を戦場にするものだ。
 政府は国民保護法に基づき5月から、弾道ミサイル飛来を想定した住民避難訓練を全国36自治体と共同で実施。だが、地下施設などない自治体が大半で、政令指定都市が定める「緊急一時避難施設」のうち、地上より有効とされる地下施設は全体の4%(道内は1.85%)。ウクライナの地下鉄駅は地下40~70㍍。札幌の地下鉄構内すら安全ではなく、他の自治体には地下施設などない。国民動員が真の狙いだ。
 9月11日、政府は土地利用規制法に基づき、札幌や旭川など道内48市町村の56区域(全国で計180区域)を「注視区域」や「特別注視区域」に指定する方針を決定。いずれも駐屯地や基地の周辺での住民闘争や反戦・反基地闘争から「基地」を守る措置だ。

[10・27ガザ緊急抗議デモで数千人のユダヤ系ニューヨーカーがグランドセントラル駅を占拠。イスラエルのガザ空爆に抗議して座りこみの闘い。300人以上が不当逮捕された。ニューヨーク州マンハッタン。]

正面装備優先で放置される劣悪な処遇

 2月の道新によると、防衛費は大幅増だが、隊員の待遇改善は進んでいない。明治時代に建てられた築114年以上の木造平屋の建物が会議室(札幌市の苗穂駐屯地)。宿舎も築50年前後は珍しくなく、住み心地が悪い。野営で使うマットは使い勝手が悪く、隊員は代替品を自費で購入。必需品の腕時計は支給されない。
 防衛省は「生活・勤務環境の改善」を掲げるが、ミサイルや戦闘機など正面装備優先。自衛隊は定員割れが常態化し、「少子化の中、なり手がますます減る」と危機感(21年度の定員充足率は93.4%だが、「士」の階級に限ると79.8%)。
 自衛隊員による犯罪が増加し、パワハラ・セクハラは放置されている。
 北海道新聞によると、道内での「不祥事」は昨年10月からの1年間で、暴行などで8人が懲戒免職、16人が停職処分。重複するがセクハラや性犯罪が8件、パワハラが3件起き、逮捕者も4人。防衛省の発表によると全国的にも増加の傾向。
 本誌73号の二ッ森菜夏さんの文章、「軍隊・自衛隊は、兵士・自衛隊員を人間ではないものに改造して送り出す機関」「国家の軍事組織である自衛隊から性暴力がなくなることはありえない」。自衛隊は常時「戦争状態」に置かれ、ウクライナの戦争報道を見ながら「台湾有事」の切迫を実感している。当局は暴力や性暴力を本気で根絶する気がない。五ノ井里奈さんの事件では、加害者の4人が昨年10月に直接謝罪していたが、6月の国家賠償請求訴訟では4人が一転、加害を否定した。
 昨年10月、陸自丘珠駐屯地勤務の自衛官(27)が2020年に自殺したのは、上司のパワハラへの陸自の無対応が原因と、遺族らが国と当時の上司に慰謝料など求めた訴訟の第1回口頭弁論が札幌地裁であった。陸自側は22年、自殺と公務の因果関係を認めて公務災害と認めたが、裁判では請求棄却を申立。潮目は変わった。
 定員割れが続く自衛隊は募集に躍起で、札幌市中心部の街角では兵器を展示して必死に勧誘。7月、陸自第2師団は道教委と全国高校総体の登山競技の運営支援に関する協定を結んだ。あらゆる機会を通して募集に奔走している。
 9月、札幌市は23年度に18歳と22歳になる3万1550人分の名簿を自衛隊札幌地方協力本部に提供(旭川・帯広・千歳市を合わせると約6万人分)。同日、秋元克広・札幌市長らは陸自北部方面総監部を訪れ、来年2月開催のさっぽろ雪まつりでの大雪像2基の製作を要請。商業イベント協力と引き換えに若者の命を差し出すようなものだ。

[10・21パレスチナ連帯10万人デモ。ロンドン。]

侵略戦争を拒む隊員を防衛しよう

 対中国戦争は、中国の兵士・民衆だけでなく、自国の民衆も危険にさらす。「闘う覚悟」を煽る麻生太郎は財閥の御曹司。麻生財閥は戦争中に軍部と結託して、朝鮮・中国民衆を強制連行し、強制労働で財を成した。こんな連中が今の経済では儲けられず、自らの没落が不可避と悟り、活路を戦争に求めている。労働者民衆・兵士の命など気にかけない。
 戦争の本質を知れば隊員は命令に従うだろうか。自衛隊員への働きかけは今、決定的だ。侵略の銃は取らない、握らないと立ち上がる隊員たちを包む労働者階級本隊の壮大な決起が必要だ。階級的労働運動、反戦闘争と国際連帯の発展を実現しよう。

[10・21国際反戦デー。パレスチナ連帯・ウクライナ反戦デモ。東京・新宿。]