会報 第69号

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巻頭言

戦争やめろ‼              労働者・兵士は国益・国境を越えて    団結しよう!

         東京西部ユニオン(元自衛官)杉橋幸雄

●新自由主義を終わらせる本格的闘いはこれからだ

 安倍「国葬」を粉砕した日本階級闘争の衝撃が全世界を駆け巡り、労働者民衆の新たな決起を生みだしています。支持率急落、歴史的な円安と世界的インフレにあえぐ日帝岸田政権・資本家階級に対する労働者階級の生き抜くための本格的闘いはいよいよこれからです。追い詰められているが故に、中国・北朝鮮脅威が声高に叫ばれ、防衛費の大増額や「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保持・強化を焦点とした「安保3文書」の改定をめぐり与党の協議が始まっています。

●大軍拡と弾圧強化の岸田政権を打倒しよう

 防衛省が発表した23年度予算の概算要求は過去最大の5兆5947億円であり、5年間で総額40兆円越えです。それは労働者民衆の生活を破壊し、同時に自衛隊の戦闘能力の質的・原理的転換をも一気に進めるものです。さらに、同概算要求には「防衛産業強化基金」が初めてもり込まれ、外国政府との交渉に政府が全面的に関与し、防衛産業への財政支援も強化するというのです。そして、先端の民生技術(AI・無人機・量子など)をも防衛分野で活用する為、24年度にも防衛装備庁に研究機関を新設する方針です。まさに中国や北朝鮮に対する侵略戦争を可能とする軍事力強化であり、絶対に許すことはできません。
 しかも、9月20日には「土地利用規制法」が全面施行されています。これは自衛隊や在日米軍基地、国境近くの離島、原発、空港や港湾などの重要インフラといった「安全保障上の観点から重要な場所」の周囲1㌔メートルを「注視区域」に指定し、その区域内の住民を監視・調査し、政府の判断で土地利用停止を命令し、従わなければ刑事罰まで科すという、まさに反戦・反基地闘争弾圧の治安法です。その矛先は南西諸島や沖縄の反戦・反基地闘争に向けられており、粉砕あるのみです。

●「自衛隊解体・兵士獲得」の闘いを推し進めよう

 そうした最中、元女性自衛官の五ノ井里奈さん(23)が在職中に男性隊員から性暴力を受けた問題が、彼女の公然たる決起によって帝国主義軍隊=自衛隊の隠蔽体質を打ち砕き、謝罪を勝ちとっています。彼女は「直接謝罪を受けることができたのは良かった。でも・・・許すつもりは全くありません」とキッパリと語り、「今はメディアでも取り上げてくれるが、いずれ忘れられる。そしてまた被害が生まれ、再び涙を流す女性が現れる。そんなことがないよう、根本的な改善を心から望んでいます」と述べています。
 ウクライナ戦争が世界戦争に転化し、日米の中国侵略戦争攻撃も激化している今日、「自衛隊解体・兵士獲得」の闘いが増々焦点化しつつあります。その闘いの内実に「女性解放闘争」をしっかりと位置付けることが決定的に求められていると思います。一切の階級的力を11・6の大爆発に集中し、国際連帯の下、闘う労働組合をよみがえらせ、新自由主義を終わらせる革命の時代を断固切り開いていきましょう!(10月20日記)

横須賀闘争の復権のために全力で闘おう!

       改憲・戦争阻止!大行進神奈川 品川孝司

<安倍国葬粉砕闘争 ・機動隊と衝突するデモ隊。9月27日。 東京・九段下>

 全学連・大行進の国葬粉砕の闘いは自民党=「勝共連合」との一体化を暴き出し、岸田政権を追い詰めています。岸田政権は、この闘いの高揚に対して、10月4日、1000キロメートルの宇宙空間を飛翔した北朝鮮のミサイル発射にJアラートを鳴らし中国脅威論「国防」論を煽り、「軍事費2倍化」「改憲」で延命するしかありません。2015年「安保関連法」反対闘争の悔しさをのりこえ、私たちが岸田政権を直接追い詰めていることが実感できる地平を遂に切りひらきました。
 国葬の翌日、9月28日、米副大統領ハリスは横須賀米海軍基地で「中国は軍事力と経済力を使って近隣諸国を脅し、おびえさせている」と排外主義をあおり、兵士を鼓舞激励しました。沖縄・琉球諸島の闘いと連帯し首都圏から反戦・反基地闘争を復権しよう。特に横須賀闘争の復権のために全力で闘おう!

<オスプレイ配備反対9・10木更津行動(木更津駅前から木更津駐屯地へのデモ)>

自衛隊員と住民の犠牲を前提にする「統合エアシーバトル構想」

 アメリカは「4年毎の国防見直し(QDR)」2010年版で中国の軍事力への警戒感を示し「統合エアシーバトル構想(Joint air sea battle concept)」を打ち出し、さらに、補強的に「海洋プレッシャー戦略」などの論議を踏まえて対中国戦争準備を進めています。
 九州から南西諸島を経て、フィリピン、カリマンタン島まで続く島嶼線を「第一列島線」とし、琉球諸島を「Ryukyus Barrier(琉球の防壁)」と呼び、「同盟国」とともにミサイル攻撃や対潜水艦戦、サイバー攻撃を駆使し、中国軍の艦船や航空機の東進を阻止して接近を阻み、「第一列島線」の西側を、「No Man’s Sea(無人海域)」にするのを第一段階の作戦としています。
 その作戦は、海空軍・電子戦などの後ろ盾(Outside)に日米の地上発射ミサイル、ロケット砲などの精密打撃ネットワーク(Inside‐Out Defense)を構築するものです。
 さらに、初期段階では、沖縄の米空軍嘉手納基地などは地理的に中国に近く、ミサイル攻撃を受けやすい「脆弱」な位置にあるため、在日米軍の主力である航空部隊はいったん分散退避することも検討されています。米中紛争が起きたら、まず、最前線で戦うのは日本の自衛隊と米軍の残留した海兵隊で、1~2ヶ月に及ぶ継戦力を要求されています。
 そして、経済封鎖などによって、長期戦に持ち込み中国を疲弊させるという戦略を打ち出しています。
 ここで重要な点は、米国が日本に核を持ち込むことと、EABOなど短距離ミサイルを保有する米陸軍の展開を前提にしています。
また、空母などは一旦グアムなどに退避して1~2ヶ月間沖縄・琉球諸島で自衛隊が戦うということです。そこでは自衛隊員も住民も犠牲にされます。
 そして、空母艦載機F‐18は空中給油を受けながら長距離攻撃を行い「懲罰」として中国本土への攻撃を行うことを視野にいれているという作戦です。
 米軍は日本を守らないこと、自衛隊は住民を守らないこと、日本政府は自衛隊員さえ犠牲にするということをはっきりさせる必要があります。軍需産業の儲けのために自衛隊の若き青年が命をかけるなどという無意味なことを絶対にやめさせなければなりません。

連合の産報化をのりこえ横須賀闘争の復権を!

 10月1日、横須賀ヴェルニー公園で神奈川平和運動センター・三浦半島地区労センター主催で「原子力空母ロナルド・レーガン横須賀配備抗議!母港撤回を求める10・1全国集会」が開催されました。主催者はコロナを口実にサイレントデモ方針を出していましたが、450人以上が結集し、現場労働者の戦争反対への怒りが示されました。

<原子力空母ロナルド・レーガン横須賀配備抗議!母港撤回を求める10・1全国集会>

 歴史的には沖縄返還闘争、本土での反基地闘争、ベトナム反戦闘争・戦車闘争、佐世保、横須賀への原子力潜水艦入港反対闘争の中で、1973年10月5日に米空母「ミッドウェー」が母港化されました。そして、ミッドウェー(73~91)、インデペンデンス(~98)、キティーホーク(~08)、原子力空母ジョージ・ワシントン(~15)、原子力空母ロナルド・レーガンと5隻に及ぶ長期間横須賀に居座っています。
 「母港化」によって、米軍人・軍属・家族の住宅問題・通学問題、艦戦修理廠の日米共同使用、基地内の日本人従業員の雇用・労働問題など、日米安保、地位協定、環境破壊、暴行事件など日常的な課題が山積しています。
 従来あった日教組の旗が、今年は遂に登場しませんでした。連合芳野会長の国葬出席は、日教組本部が反戦・反基地闘争から手を引き戦争教育に加担することです。
大行進は全学連先頭にオリンピック反対闘争、国葬反対闘争、沖縄闘争を牽引し、新たな反戦闘争の時代を切りひらいてきました。その中で、神奈川でも国葬反対キャラバンを展開し横須賀闘争の再建に向けて8月以降全力で闘い抜きました。
 10月1日当日は、全学連をはじめ、横田、木更津、朝霞、首都圏の大行進の仲間が駆けつけてくれました。デモは70人の隊列で太鼓のリズムを市内に響かせシュプレヒコールでアピールしました。実は集会参加者も「太鼓はいいね」「国葬反対の大衆闘争をやったからたくさん集まったね」「若い学生がいっぱいいていいね」とうれしそうに感想を伝えてきました。

 12・3横須賀闘争に結集を!

 横須賀では、特に海上自衛隊が侵略出撃部隊として強化されています。護衛艦「いずも」「かが」は空母化され、F‐35Bを搭載し、新型潜水艦「たいげい」は初めて対艦ハープーン・ミサイルを搭載し敵基地攻撃能力を付与されます。最新鋭大型ミサイルの格納が行われる比与宇(ひよう)弾薬庫。自衛艦隊司令部、潜水艦隊司令部、掃海隊群司令部など司令部機能を統合した作戦センターの新設など、全てが中国侵略戦争に向けた基地機能強化です。
 横須賀の幹線道路16号線では、日常的に、自衛隊車両、民間車両が数台も連なって武器、弾薬の輸送がおこなわれています。
 11月労働者集会を反戦集会として、万の結集を作り出しましょう。そして、横須賀の反戦・反基地闘争の復権によって中国侵略戦争をとめましょう。
 12月3日、大行進横須賀が主催して反戦集会とデモを行います。全国からの結集を呼びかけます。ともに闘いましょう!

<米日による中国侵略戦争とめよう!オスプレイ撤去!10・2横田反戦反基地デモ>

 

ウクライナ侵略戦争と中国侵略戦争を仕掛けているのは誰か

     迎賓館・横田爆取デッチ上げ元被告・板垣 宏

1.ウクライナ戦争は危機に立つ米帝の対中国侵略戦争へののめり込みを促進

 ウクライナ戦争は、米帝(EU帝)の「武器支援」=実質的参戦国化により泥沼化・長期化し、追い詰められたロシア・プーチン政権はますます絶望的で凄惨な市街地への攻撃を拡大、世界戦争(核戦争)への転化もしかねない情勢となっています。この情勢をもたらしたものは、米帝の没落・新自由主義の最後的破綻です。米帝は中国を叩き潰す以外に生き残れないと考え、まずはロシアを戦争に引きずり込むことで、中露間を分断し、中国を孤立させた上で叩き潰す戦略を構想しています。これがウクライナ戦争の本質であり、新自由主義の崩壊的危機に立つ米帝の対中国侵略戦争へののめり込みを促進しています。私たちは、労働者階級の国際連帯と反戦・反核闘争でこの戦争を阻止しなくてはなりません。

2.中国は「国際秩序を変える能力と意図を持ち、そのためのより大きな経済力、外交力、軍事力を持っている唯一の競争相手」

 バイデン政権が2021年3月に発表した国家安全保障戦略暫定指針(以下「暫定指針」という)において、インド太平洋地域と欧州地域における米軍のプレゼンスを最重視する方針を表明し、特に、中国について、「安定し開かれた国際システムに対して持続的に挑戦する能力を秘めた唯一の競争相手」と位置づけ、長期的に対抗していく考えを示したことでも明らかです。また、この考えは2022年10月12日に公表された「国家安全保障戦略」においても、➀ロシアは、「今日の国際秩序の基本法を無責任に損ね、自由で開かれた国際システムに対する直接的な脅威となっている」、➁中国は「国際秩序を変える能力と意図を持ち、そのためのより大きな経済力、外交力、軍事力を持っている唯一の競争相手」と重ねて明記されていることでより鮮明に示されています。

3.ウクライナ戦争はNATOの東方拡大が元凶

 ウクライナ戦争については、日帝・岸田政権や野党、マスコミも含めてロシア非難一色に染め上げられていますが、東欧において一貫して戦争を挑発してきたのは米帝(とEU諸国帝)です。「前進」(3239号・2022年4月11日付)「戦争の元凶は帝国主義だ 反帝・反スタ世界革命のみが世界戦争・核戦争阻止する道」は次のように述べています。
 同紙は、NATOが、「ソ連の侵略に対抗する」という口実のもと、帝国主義諸国の軍隊の中で圧倒的・絶対的な実力をもつ米軍をヨーロッパ各国に展開することを法制度的に可能とするものとして、「1949年に結成された巨大軍事同盟」であり、「日米安保条約と並んで、米帝を基軸とする帝国主義戦後世界体制の最も重要な軍事的支柱をなしてきた」。「米帝(とNATO)は、「『緩衝地帯』とされてきた東欧諸国を次々と加盟させた。99年から2020年までの5次におよぶ東方拡大で加盟国は16カ国から30カ国へと膨張」した。そして、この東方拡大は極めて暴力的で犯罪的な人民虐殺の侵略戦争を伴い、「1999年の旧ユーゴスラビアへのNATO軍の空爆では、78日間で総計1万回以上もの爆撃が行われ、民間人だけで死者1500人以上、負傷者は5千人以上に達し、150万人が避難民となった。またNATO側が認めただけでも約3万1千発もの劣化ウラン弾が使用され、想像を絶する放射能汚染が広がった。2001年以降20年にわたるアフガニスタン侵略戦争にも参戦した。それらは、バイデンや岸田がロシアを非難して言う『戦争犯罪』『力による現状変更』以外のなにものでもなかった」とその歴史的背景を明らかにしています。
 さらに現在、ウクライナ、ジョージア、フィンランド、スェーデンのNATO加盟という攻撃が突き付けられるに及んで、ロシア・プーチンは完全に追い詰められてウクライナに侵攻したのです。

4.中国への米帝の戦争挑発「クアッド」と「AUKUS(オーカス)」そして「台湾政策法案」の可決

 東アジアにおいて米帝バイデン政権は、ペロシ下院議長の台湾訪問を強行し、さらに「台湾政策法案」を米上院外交員会が9月14日に可決しました。従来の「一つの中国」政策から大転換し、台湾を「一つの国」と見なすもので中国侵略戦争の表明にほかなりません。事実、バイデンは9月18日に米CBSの番組で、「台湾が攻撃された場合米軍が台湾を守るか」との質問に対し「イエス」と答えています。
 2021年9月、日本・米国・オーストラリア・インドの4ヵ国が「クアッド」(日米豪印戦略対話)を設立。「自由で開かれたインド太平洋」へのコミットメントを確認し、同月、米国・オーストラリア・英国の3ヵ国は、インド太平洋地域における外交、安全保障、防衛の協力を深めることを目的とした新たな安全保障協力の枠組みとなる「AUKUS(オーカス)」(軍事同盟)=「アジア版NATO」の設立を発表しています。
 2022年版防衛白書には「主な日米共同訓練の実績」として、2021年度に大小の日米共同訓練が、陸海空自によりそれぞれ毎月、数回、日本海、沖縄周辺、東中国海(東シナ海)、南中国海(南シナ海)、インド洋、グアム西方、オーストラリア北方などで繰り返していることが明記されています。これに米帝は、空母「カール・ヴィンソン」、「エイブラハム・リンカーン」、「ロナルド・レーガン」、強襲揚陸艦「アメリカ」、「エセックス」、ドック型揚陸艦「パール・ハーバー」、「ニューオリンズ」、「グリーン・ベイ」、「アシュランド」などの主力艦。B―52戦略爆撃機、最新鋭のステルス戦闘機F―35A及びBなどが参加、圧倒的な軍事力を誇示して、中国を挑発しています。


 今年に入っても、米軍だけでも1万人以上が参加した、日米共同訓練「ノーブル・フュージョン2022」が2月3~7日に小規模部隊を分散展開させる新たな「遠征前方基地作戦」を含む共同訓練を、沖縄の宮古海峡付近などで自衛隊と合同で実施したのを始めとして、8月中旬からは離島防衛を想定した日米共同訓練「オリエント・シールド」が行われハイマースが奄美大島に初めて展開しました。また、10月1~10日には米原子力空母「ロナルド・レーガン」などが参加して日本海を含む日本周辺の海域での日米共同訓練が行われるなど、より一層活発な戦争挑発が行われています。
 政府・野党を含む既成の政治勢力、マスコミは、盛んに中国の軍事費の急激な拡大(それでも米軍事予算の1/3でしかありません)や、軍事力の強化、日本海や南中国海での中国軍の活動、戦略ミサイルの発射などを取り上げて、「力による現状変更」であると非難しています。しかし、それらは上記のように圧倒的な軍事力を展開して「力による現状変更」を推し進めているのは米(日)帝であり、中国残存スターリン主義・習近平はこれに反労働者的な戦争政策をもって受動的・対抗的に対応しているに過ぎません。それ自体、許せませんが、戦争挑発の元凶は米日帝にあることは明白です。

5.戦争を直ちに終わらせる労働者階級の国際連帯・反戦闘争を

 帝国主義戦争を終わらせるには、労働者階級の国際連帯による反戦闘争・祖国敗北主義によって自国政府・帝国主義(及び中ソ残存スターリン主義)を打倒するプロレタリア革命以外にありません。(了)

世界戦争の危機を        プロレタリア世界革命へ!

                     滝山猛師

戦争か、革命か

 ロシアのウクライナ侵攻から8ヵ月、クリミヤ併合から捉えれば8年超。すでに泥沼化しているウクライナ戦争は核戦争の危機に世界を引きずり込もうとしている。情勢は全労働者民衆に「戦争か、革命か」、というこの二者択一を改めて突きつけている。誰が見てもウクライナ戦争は米帝(EU)対ロシア(中国)の全面戦争への道を進んでいる。

世界核戦争の危機と、米帝の対ロシア・中国核戦争戦略

 ロシアのウクライナ侵攻直後から戦争が核戦争へとエスカレートする危険性は多く指摘されてきた。それはロシア・プーチンの核戦略ドクトリンでロシアの領土が通常兵器による攻撃で脅かされる事態には核兵器を使用すると規定し、さらにプーチン自身が「核の使用」を公言しているからだ。
 それだけではない。核拡散防止条約(NPT)再検討会議は8月、核兵器保有国に「先制不使用」宣言を促したが、その文言を削除し核の先制使用を事実上認めた。また米帝の「NPR2018」では、「核攻撃の抑止は核兵器の『唯一の目的』ではない」と断言し、「究極の状況」では核を使用するとした。「究極の状況」とは、核によらない重大な戦略攻撃、つまり米帝や同盟国、パートナー国の民間人・インフラに対する攻撃、核戦力に対する攻撃、核戦力の指揮統制・警戒・攻撃評価能力に対する通常兵器やサイバー攻撃に対しても核の先制使用を容認した。同時に、オバマ大統領が任期末に検討した「核の先制不使用(NFU)」についても、同盟国やパートナー国への抑止と安心を担保する上で、現在米帝がNFUを採用することは正当化されないと核の先制不使用を排除した。バイデンもこれを引き継いでいる。
 NPR2018では、ロシア、中国、北朝鮮、イランの4ヵ国を対象とした各国別の戦略を明記している。
 ロシアについては、限定的な核の先制使用を行う可能性を示唆している。つまりロシアは状況をエスカレートさせることで、最終的にロシアにとって望ましい形で戦争を終結する戦略をとっていると分析している。そのうえで米帝の戦略核3本柱、NATOの戦術核、英仏の核戦力を組み合わせた「核と通常戦力」で対ロシア態勢を維持するとしている。要するに米帝は、ウクライナ戦争でロシアが核を使用すると分析しているのだ。
 中国については、米帝の「対中戦略はいかなる限定的な核使用であっても、それによって中国が有利となると中国指導部に誤解させないようにすることだ」として、米帝は「核・非核の侵略に対し、断固として対応する用意がある」と明記している。ここでも米帝は核の先制使用で対応するとしている。
 ゼレンスキーはウクライナ東部・南部4州併合後の攻防戦の過程でNATOに対しロシアへの先制核攻撃を求めた。

米帝の核戦争計画と日本の最前線基地化

 米帝は10月15日、ウクライナ戦争のエスカレーションについての「あり得るシナリオ」と対応策の検討に入った。現情勢下での対応とは「核戦争計画」の具体化だ。
具体的には、ロシアは「ウクライナの人口密集地への核攻撃は命令せず」と「分析」しているが、ザポリージャ原子力発電所への核攻撃、高高度での核爆発などの命令は可能性ありとしている。米帝のこの分析が具体的に起こればロシアへの先制核攻撃が実施されることになる。米帝はヒロシマ・ナガサキへ核を投下した。

 これは米中戦争を見据えても、むしろ対中軍事戦略としても米帝軍事力の維持・強化という必要性からもロシアを徹底的にたたきつぶす必要に迫られている。
 誤解を恐れずに言えば「EABO(遠征前方基地作戦)」など米軍事力(通常兵器)による中国軍事力の第一列島戦内への封じ込めは、軍事的には相当、無理がある。通常兵器の配備だけでは不可能である。
 米帝はEABOの主力部隊ともいえる「海兵沿岸連隊(MLR)」を2020年に創設した。海兵隊が主力である。同連隊は三つの部隊(①沿岸戦闘チーム(LCT)、②沿岸対空大隊、③沿岸兵站大隊)で構成されるが、2030年までに戦車中隊を排除し、ティルトローター(オスプレイ)、重ヘリ飛行隊の削減、飛行中隊数を削減する、現役海兵隊員を今後の10年間で約1万6000人を削減するなどの新構想計画が出ている。削減された一部はドローン、無人兵器の配備に転換する(「Force Design2030」)。つまり最前線兵力の削減である。
 結論を言えば、米海兵隊などの最前線兵力の削減は核戦争を想定した計画への舵取りであることを意味する。在日・在韓米軍も再編計画でグアム基地などへ後退配備が進んでいる。したがって米帝にとって沖縄・南西諸島への自衛隊の最前線配備と日本全土の「不沈空母化」は米中戦争に不可欠となる。
 バイデンは「国家安全保障戦略(NSS)」で最も差し迫った戦略的課題として「権威主義的な統治と修正主義的な外交政策を重ねる大国」として、中国とロシアンへの対応を第一に押し出し、そのために日帝や豪州、NATOなどとの同盟強化を「最も重要で戦略的資産」と押し出した。その中身が日米軍事一体化・兵器・通信・情報の共通化、日本全土の「最前線基地化」だ。武器・弾薬・燃料の兵站補給基地の強化、ミサイル配備と核配備計画が2プラス2協議の下、水面下で激しく進行しているということだ。ウクライナ戦争におけるロシアの「補給・兵站」の破綻がプーチンの軍事戦略の破綻を引き出したという総括を反面教師としている。

 つまりウクライナ戦争で米中戦争における「日米の軍事と協力態勢の具体的強化」が喫緊の課題として急浮上したということ。米軍は現在、インド太平洋で対中戦争へむけ部隊を再編・分散させる戦略を推進している。核戦争計画の一方で、分散戦略は補給体制の複雑さが増し、その解決策の具体的態勢の早期構築が課題に挙がったということだ。ウクライナ戦争を見るまでもなく、「兵站・補給態勢」の「確立と維持」が戦況を大きく左右し、勝敗を決するのが戦争の常である。対中戦争に向け米帝が日米連携・一体化の強化に動き出しているのはそのためだ。
 米海兵隊総司令官・デビッド・バーガーは4月、訪問先のオーストラリアで、ロシアのウクライナ侵攻の教訓として、「補給・補給・補給だ!」と補給体制の重要性を真っ先に繰り返した。戦端が開けば「(部隊が)どれぐらい遠くに、どれぐらい早く行けるかを左右する。補給は最後に計画するものであってはならない」と強調し力説したが、インド太平洋地域ではいまだ確立できていない現実を認めているということだ。
 「高度なハイテク兵器」は弾薬や燃料が不足すれば兵器は無用の長物と化す。「完璧な作戦計画」があっても兵士に食料が届かなければ「士気が下がり作戦の実行」は危機に陥る。最も戦争に「大義」と「正義」がなければ「士気」は下がる。それが今のロシア兵だ。高額の傭兵も戦況が不利になれば士気は落ち、逃走する。その意味で一般的には「侵略する側」と「侵略される側」の士気は対極にあるともいえる。ロシア軍はウクライナの首都キーウ(キエフ)まで15キロメートルほどに迫ったが撤退を余儀なくされた。サイバーや宇宙に戦闘領域が広がり戦闘のハイテク化が進むなかでも、「戦闘の基本」である「補給体制の重要性」を浮き彫りにしたとして今、米帝は在日米軍基地への燃料・武器・弾薬・物資の補給を強化し始めている。

 海兵隊は「EABO(遠征前線基地作戦)」と呼ばれる戦略を進めている。戦端が開けば離島や沿岸部に分散して「臨時基地を設営」し、対艦ミサイル発射や防空、情報収集などの拠点とする。同じ拠点には短期間しか滞在せずに別の離島などに移動して新たな拠点をつくる。「俊敏に移動」しなければ敵のミサイル攻撃の対象になるのは必定。分散戦略は進めば進むほどに補給体制の難度は増す。多数の地点に部隊が分散すれば、それに合わせて「弾薬や燃料」、「食料」を供給する頻度や補給先が増え、かつ複雑になる。一段と緻密な補給・兵站体制を確立し、機能しなければ分散した部隊は壊滅するか敗走する。
 中国が保有するミサイルも大量で精度が上がっている。米軍は制空権や制海権を確保しなければ補給作戦とその活動は成立しない。米本土からの補給は、艦船が米西海岸から北東アジアへ移動する時間は3週間を要し、前線に接近し、中国のミサイルの射程内に入ればただちに標的となる。これは米議会でも前提として議論されている。米空母も例外ではない。前線に接近できない可能性も高くなる。「米国は海における明確な優位性を失ってきており、重大な状況や緊急時には米国は日本などの同盟国による補給支援の拡大を必要としている」(米ハドソン研究所)ということだ。だが、果たして可能か。
 日米は1月の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)後の共同文書で台湾有事を念頭に「緊急事態に関する共同計画作業の確固たる進展」を明記した。日米の軍事一体化と日帝の兵站・補給の全面的協力、日帝の参戦なくして台湾有事―米中戦争は成り立たない、という危機感に米帝は追い込まれているということである。米帝はその対策として日米(韓)軍事訓練を日に数か所の規模で実施し、平時から日本で燃料・兵器の備蓄を増やす、としている。反戦・反基地闘争の全国的展開で、戦争と核戦争計画を、断固、阻止しよう!

改憲と軍拡に突進する岸田政権を実力で打倒しよう

 円が一時150円に急落(20日)。貿易赤字11兆円75億円。上半期の赤字としては79年度以降で最大の事態だ。これまでの最大の赤字は2013年度下半期の8兆7601億円。22年度全体でも13年度の13兆7564億円を大幅に超え、最大を更新するのは確実の事態だ。金利を上げても日帝は別のジレンマに陥る。ウクライナ戦争と円安で物価の上昇に歯止めがかからなくなる。物価上昇による労働者民衆の負担に加え、円安がこのまま推移すれば、21年度比で家計負担は平均で約8万6000円増(ミズホリサーチ&テクノロジーズ試算)となる。これはシングルマザーや低所得者層にはさらに負担が増加する構造で生きていけないところに追い込まれることを示す。2年連続で女性の自殺が増加している。他方、ロシア国内で、世界で、女性の反戦決起が爆発している。戦争の時代は、特に女性と子供に犠牲と矛盾が集中する。資本主義・帝国主義など社会に根差す女性差別への怒りの爆発だ。性暴力に対する自衛隊内の女性兵士の怒りの決起。これも同様だ。怒りは行動として爆発する。

<電子署名サイトより>

 岸田は年末「安保3文書」の改定を強行し、米中戦争参戦へ「あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を抜本的に強化する」と明言している。全土基地化、核の共有・配備はもとより、文言からすれば日帝独自の核保有も含まれている。一切は日帝支配階級と労働者階級民衆の力関係が決する。
 米帝の「堅固な同盟国」英帝のトラス首相がわずか1ヶ月で辞任に追い込まれた。米帝バイデンの没落も加速する。世界の労働者の国際連帯を強化し、ウクライナ戦争―世界核戦争をプロレタリア世界革命で阻止しよう!世界各国で自国の支配階級を実力で打倒する反帝国主義・反スターリン主義革命運動を拡げよう!チャンスだ!11・6国際労働者集会へ総結集しよう!世界から!ともに進撃しよう!