会報 22号

Rise 第22号 2012年11月10日発行

rise22

護衛艦 「たちかぜ」 裁判  特集

(写真 日比谷野音を埋め尽くした11・4労働者集会)

労働者・兵士の 団結した行動で大失業・戦争を革命に転化しよう!

動労千葉・動労水戸を先頭にした10・1外注化阻止決戦は、非正規職撤廃闘争の全国化の展望を握りしめ、11・4全国労働者集会5800人の決起は新自由主義を根底から打ち破る展望を大きく押し拓き、恐慌を革命に転化する2013年の勝利の展望を掴んだ!
大国間争闘戦の激化と破産の危機にのた打つ野田政権・日本帝国主義・ブルジョアジーは、あくまで原発推進・核武装化、消費大増税、「国家の危機」・「領土」を叫び立て、労働者の団結と生活を破壊し、全労働者を非正規職化と大失業・戦争に引きずり込もうとしています。一握りの資本家の為に自衛隊・陸自兵士には「海兵隊化」への訓練が強化され、福島では非正規労働者を中心に命を削る原発事故収束作業が高線量被曝のもとで取り組まれている。子供達に甲状腺ガンなどの症状が表れ、内部被曝問題が表面化している。ウクライナ政府緊急事態省はチェルノブイリ原発事故で内部被爆による慢性疾患を抱える子どもの割合を92年の21・1%から、08年は78・2%に急増していることを公表した。内部被曝は3・11の大動員で被曝した自衛官や多くの住民にも避けられない事態です。その陰で、青年や高齢者を中心に毎年3万人を超える人々が自殺に追い込まれている。これらは新自由主義が破産した凄まじい現実だ。外注化・非正規職撤廃と全職場の安全・保安闘争の拡大で、労働者階級の団結を強化し、社会を根底から変えていこう!

護衛艦「たちかぜ」の中で「役立たず」と徹底的にいじめられ、自殺に追いこまれた青年自衛官をめぐる控訴審裁判で明らかになった政府・防衛省の「証拠隠蔽」「事実の改ざん」「責任逃れ」の体質は、原発事故で暴露された政府や東電・御用学者らと同じです。そういう連中が「国家の危機」「領土」を掲げ、自衛隊を政治の前面に登場させ戦争・改憲を叫び立てています。その最先兵に石原が登場している。戦争で何が解決できるというのだ!石原も、橋下も、野田政権も串刺しで打倒あるのみです!

「役立たず」で何が悪い!
非正規職撤廃・全原発廃炉は世界の労働者の共通の闘い。崩壊しているこの国家社会を根本から変える根源的力は世界の労働者民衆の階級的団結であり、資本との戦場である職場生産点からの全労働者の総決起です。2013年、解雇を恐れず、しかし職場に断固、踏みとどまり、新自由主義を打ち破る労働組合を全国に甦らせ、人間らしく生きられる社会を断固、建設しよう! 自衛官と家族の皆さん!労働者と団結して共に闘おう!
(杉橋)

—————————————————

特集 「たちかぜ」訴訟で明らかになった 「戦争と軍隊」の本質

領土問題とは

今号は、読者の皆さんに護衛「たちかぜ」訴訟の特集をおくります。
世界恐慌と3・11情勢以降、世界と日本は、確実に全労働者の非正規職化・大失業と戦争に向かって突き進んでいます。08年のリーマンショック以降、世界で起きていることはアメリカの没落とドル暴落の危機、EU解体の危機、中国バブルの崩壊と国内の大動乱の始まり、中東危機=イランへの経済・軍事重圧の激化、そして日本の改憲と戦争国家化への突進であります。野田政権の「尖閣(釣魚台)国有化」宣言は、その顕著な現れです。日韓における独島(竹島)問題も日・韓それぞれの労働者民衆(国民)を民族差別と排外主義、国家主義の思想に絡めとる意図で扇動されているということです。
そもそも労働者階級・民衆にとって「国境」や「領土」はありません。「固有の領土」など存在しないのです。そもそも「独島(竹島)」、「釣魚台(尖閣列島)」はいずれも日本帝国主義が過去の侵略戦争で朝鮮、中国から奪い取ったものです。19世紀末に帝国主義列強が相次いで中国侵略に乗り出し、植民地の奪い合いを行っている最中、日本は1894年8月から日清戦争を開始した。翌95年1月には中国大陸に次々と侵略軍を派兵した。そのただ中で「尖閣諸島」の領有宣言を行ったのです。
「竹島」についても同様です。政府は1905年1月の閣議決定で独島を島根県に編入し、領有の意思を再確認したと言っている。だが、これも1904年2月に政府がロシアに宣戦布告した日露戦争の最中のことです。日露戦争は、朝鮮半島の勢力圏化をめぐる帝国主義戦争であり、この戦争の最中の第1次日韓協約(04年8月)によって当時の大韓帝国の外交権を奪い、「竹島」を日本の領土とする閣議決定が行われたのです。そして1910年には朝鮮の植民地化を強行した(韓国併合)。
いずれも侵略戦争で相手に銃剣を突き付けた状態で領有宣言を行っているのです。この歴史的経緯からしても、とうてい「日本の固有の領土」などと言えるものでないのです。
世界の「先進国」といわれている国家では1%の資本家階級と99%の労働者階級民衆に大別することができますが、「国境や領土」というのはそれぞれの国における1%の支配階級の利害を守り、拡大するためにあるのが「国境」「領土」という概念です。だからこそ「領土」は1%のブルジョアジーのその時の力関係で「変更」し、その「変更」のための侵略=奪略戦争に労働者人民を動員するイデォロギーとして、国家は差別排外主義と国家主義を煽動するのです。それが領土問題の本質です。したがって「国家」は本質的にも現実的にも99%の労働者・人民の利害ために機能するのではなく、
わずか1%の資本家(経団連など)のための機構として法制化されているにすぎないのです。これは現下の原発再稼動反対・全原発を廃炉へ! という「国民的意志」を無視して再稼動と原発のパッケージ輸出、核武装化を国策として強行している野田政権を見れば明快です。これは自民党も同様です。そして翼賛勢力と化した労働組合・連合は原発政策の推進を掲げ労働者階級・民衆の反原発闘争を抑える側に移行している。 原発は地上に置かれた原爆・核であり、人類と核は絶対的に共存できません。それは原発事故後のフクシマの現実やすでに子どもに甲状腺ガンが発症している現実を見れば明白です。
原発事故を起こした東電を膨大な公金で救済し、さらに増税してでも救済し、資本主義・新自由主義が生み出している全ての矛盾を労働者・民衆に犠牲転嫁してでも1%の利益を護るために存在しているのが日本という国家であり、野田政権なのです。10数兆円という巨額の復興予算が被災地の救済と復興のために投入されることなく「日本の再生」という口実で自衛隊や警察をはじめ、結局、被災地に無関係な1%の利益のためにばら撒かれている事実を見ればあまりにも明快です。
したがって私たち労働者階級民衆の立場は領土・国境、人種を超えた世界で単一の階級として、共通の敵である1%のブルジョアジーを打倒するために、日本・韓国・中国の労働者階級人民は世界のプロレタリアートとも固く団結し、国際的連帯と団結を強化してともに決起し、闘うということです。
さて、「たちかぜ」訴訟について触れていきますが、事実経過は報道を基にしていることをお断りしておきます。

(写真 ミサイル搭載護衛艦「たちかぜ」この艦内でいじめが横行していた)

事件・訴訟 経緯

① 04年10月27日 横須賀基地の護衛艦「たちかぜ」乗組1等海士(当時21歳)が隊内のいじめが原因で京浜急行・立会川駅で飛び込み自殺。バッグから「遺書(メモ)」が発見。
「皆へ、ありがとう」「お前だけは絶対に許さねえからな。必ず呪い殺してヤル。悪徳商法みてーなことやって楽しいのか?そんな汚れた金なんてただの紙クズだ。そんなのを手にして笑ってるお前は紙クズ以下だ」。

② 05年1月、佐藤2等海曹が別の海上自衛官への暴行罪・恐喝罪で有罪判決を受ける。海自を懲戒免職処分。佐藤は「たちかぜ」艦内にエアガン・ガスガンなどを持ち込み、レーダーやコンピューター機器など精密機械を置く立ち入り制限区域・CIC室でサバイバルゲームに興じていたことが後の裁判で判明。上官・艦長は黙認していた。

② 05年1月 海自事故調査委員会は、アンケート調査をもとに、「いじめと自殺の因果関係は不明」とする報告書を公表。
同年、情報公開請求に対し、防衛省・海自は「破棄した」と回答。

③ 06年4月5日 両親が国と元上職を相手に横浜地裁に提訴。慰謝料など1億3000万円請求。

④ 11年1月26日 横浜地裁は「いじめは艦内では日常茶飯事、常習的で、本件は氷山の一角」、自殺は元2等海曹の「いじめが原因」と国の監督責任を認めたが、「自殺は予見できなかった」と判断、440万円の支払い命令判決。即日控訴。
判決は、日常的に殴る蹴るの暴行傷害を加え、エアガンで撃ち暴行傷害を加え、上職の立場を利用し、視聴済みのアダルトビデオを高額で買い取らせていた事実を認定。

⑤ 11年10月5日 自殺に追い込んだ国と自衛隊の責任糾明を求めた控訴審が開始。

⑥ 12年3月 元被告側指定代理人(現役3等海佐・45歳)が国・自衛隊の証拠隠蔽の事実を告発する陳述書を東京高裁に提出(後述)。
⑦ 12年9月12日第7回控訴審裁判で被告国・自衛隊が195点の証拠文書を開示。

3等海佐が決起

被告側・元指定代理人3等海佐が正義の決起。第1審横浜地裁審理の被告側指定代理人(3等海佐・45歳、06年4月提訴~07年1月までの期間)が控訴審で海自側の証拠隠しを告発。本年3月、証拠隠蔽を暴露した陳述書を東京高裁に提出した。
海自は1等海士の自殺直後、艦内で全員(190人)に「暴行や恐喝の有無」を問う用紙2枚の「艦内生活実態アンケート」を実施した。原告は、提訴した06年にもこのアンケートの開示を請求。海自側は「破棄した」と回答。3佐は、陳述書で「破棄回答の後にアンケートを見た」、「当時の情報担当者が、アンケートは今も存在しているが破棄したことになっている」と話したことも陳述。
その他、自殺直後に、いじめをした元2等海曹や同僚隊員から聞き取りをしたメモなどの文書が7点あり、海自が存在を隠していることも暴露している。これに対し、被告側は「裁判の判断に影響する内容ではない」という意見書を提出している。

3等海佐の陳述要旨

(1)3佐が海自組織による文書の隠蔽を知ったのは遺族提訴(06年4月5日)の2日後。「アンケートは存在しているが破棄したことになっている」(海自情報公開室担当者)ということを確認。

(2)3佐は提訴から約9ヶ月後の07年1月、海自内人事異動で指定代理人を外れた。文書の存在を隠した件がずっと心に引っ掛かっていたが、事実を公にする勇気はなかった。

(3)事実を公にしても組織が再び口裏合わせをして事実を偽るかもしれず、自身や家族が破滅するかもしれないとの恐怖が捨て切れなかった。

(4)08年防衛省の告発窓口に通報したが「事実は無い」とはねつけらた。
11年1月26日、横浜地裁(水野邦夫裁判長)は、元2等海曹の暴行や上官が監督義務を怠ったことと自殺の因果関係を認め、「先輩の暴行、恐喝が自殺原因」と認定。だが、「元2等海曹の前で自殺の危険をうかがわせる兆候は認められない」と、予見可能性がなかったことを理由に、死亡に対する賠償は認定しなかった。実質、原告敗訴判決である。
3佐は「防衛省、海自が不利な事実を隠したまま『不正な勝利』を得てしまうことはどうしても我慢できない」として同日、被告側国の裁判責任者に「アンケート提出」を訴えたが、「今更、出せない」と拒否。 そこで同日、3佐自身が情報公開を請求。その結果、文書隠蔽だけではなく、事故調査結果が作り直されていることも判明した。

(5)防衛省・海自や行政庁がウソをつけば、民主主義の過程そのものが歪められる、として告発=反乱に決起した(神奈川新聞12・6・18などから)。

暴露に対する被告・国の対応

すでに見たとおり、3佐の東京高裁への陳述書の提出は12年3月。
被告側は12年6月18日の公判で、「破棄した」とする文書は裁判に「影響する内容ではない」と存在を認めた。認めた文書は開示請求していた計8点のうち7点。そのうち、①艦長が、一等海士の自殺直後に遺族が護衛艦を訪れた時の様子をまとめ、上級司令部に報告した文書については「行政文書」として保管していることを認め、②暴行・恐喝していた元2曹への聞き取りメモ、自宅待機を命じられた元隊員と別の乗員隊員との電話でのやりとりをまとめたメモなど他6点については、「個人メモ」もしくは「手控えメモ」として残されていることを認めたが「公的文書」ではなく「私的」文書であるため、「提出のつもりはない」と開示拒否。 これに対し裁判長も公判廷では「提出を要求するつもりはない」と応じたが合議後、原告側が「文書提出命令」を裁判所に申し入れ、被告・国側が、「2週間以内に返答をする」ことが決まった。 東京高裁は次回期日(9月12日)までに、原告側の「提出命令申し立て」を認めるかどうかを判断する、とした。

(写真 記者会見で謝罪する杉本正彦海上幕僚長【2012年6月21日】)

原告家族の怒りは非和解である

公判の翌日(6月19日)、杉本正彦海上幕僚長は、記者会見で文書は「破棄した」、「再調査はしない」と繰り返す。
だが追い詰められた防衛省・杉本は21日の記者会で一転する。20日午前、横須賀地方総監部が観察官室を調べ、キャビネットに保管していたファイル(昨年10月に退職した准尉が作成)に190人全員のアンケートの原本があるのを認め謝罪。 ファイルの背表紙には「たちかぜ関連」と記載。杉本は「なぜそうなったのか調査委員会を設置して調査する」と説明しているが7年間にわたり国が証拠を隠蔽し続けてきた事実には一切、触れていない。3等海佐の決起・反乱で「このままでは耐えられない、持ちこたえられない」と判断し、存在を認めただけである。原告・家族の怒り、非和解性はますます強くなる。

防衛省は、7月19日付けで文書管理上、不適切(指揮監督義務違反)であったとして杉本正彦海上幕僚長を口頭注意、河村克則横須賀地方総監を注意処分。河村はこれにより次期海上幕僚長への道を閉ざされ、7月26日付で杉本とともに退官。杉本の後任には自衛艦隊司令官の河野克俊が就任。

「組織的な隠蔽は無かった」と開き直る

9月4日、河野克俊海上幕僚長は、記者会見で艦内乗組員190人へのアンケート調査資料の存在が明らかになった件について、「アンケートは行政文書ではなく、個人資料として保管していたことが原因」と繰り返し、「組織的な隠蔽はなかった、文書管理については教育を徹底していく」と開き直り、関係職員への処分で幕を閉じようとしている。
家族は、艦内調査資料という一番重要な証拠を「用済み後破棄処分」の「決定」=「証拠隠し」を下した責任者についての言及が一切ないことに怒り、「国・自衛隊は要求されている全証拠を提出せよ」、「関係者の不誠実な態度が、遺族をさらに苦しめる」と、静かに、根底的な怒りを現している。
いじめと自殺の因果関係を隠蔽するために、「風俗通いによる多額の借財が自殺の原因である」とデッチあげ、1等海士の人格を辱め、落とし込め、汚名を着せてでも証拠を隠蔽し続け、証拠隠蔽の事実が暴露されるや、今度は、職員への処分で乗り切ろうとする。これが国家権力・防衛省・自衛隊の本質である。怒りに堪えない!

非和解で闘えば必ず 勝利する

9月12日、第7回控訴審で被告・国側は、一貫して「破棄した」と回答していた「艦内アンケート」など195点の証拠文書を開示してきた。 だが高裁は、同日の第7回控訴審で3佐の証人採用を認めていない。証人採用を認めさせれば原審を根底から覆す裁判になる。家族の怒りは慰謝料などで収まるものではありません。怒りは非和解です。

繰り返すが11年1月の横浜地裁判決は、自殺は「いじめ」が原因と認定したが、自殺は「予見できなかった」と被告・国側の責任を排除した。
だが、新たに開示された文書のなかに1等海士の「自殺の予見可能性に関する文書も含まれていた」(9・13神奈川新聞、以下「」内は同新聞からの引用)。

「予見可能性に関する文書は『自殺に関しての事情聴取』とされる聞き取りメモ」である。聴取は、自殺当日、当時の「たちかぜ」砲雷長が艦内同僚隊員に対して行っている(※自殺当日の04年10月27日)。
その中で「同僚は聴取で『自殺前夜に一緒に飲みに行き、男性から自殺する決心がついたという告白を受けた(※04年10月26日、「養老乃滝」にて、N士長)』と話し、自殺を思いとどまるよう説得したと打ち明けている」、「さらに、自殺の1カ月ほど前から、男性が『(艦内で)いつもたたかれ、からかわれて何をしに艦に来ているのか分からない』と話していた点に触れ、『男性が落ち込んでいる様子がうかがわれた』と、周囲が異変に気が付いていたことにも言及していた」。要するに、自殺に追い込まれた1等海士は国家・自衛隊・海自によって殺されたという事実が文書(同僚の証言)によって明らかになったのである。

9・12控訴審での家族の怒り

自殺から7年10ヶ月。「自衛隊は、多くの隠蔽工作を図ってきました」、「艦長は真相究明を約束してくれた。だが『裏切られた』」。「勝手に(息子の)遺留品を調べられ、いじめの実態調査のために全隊員に行われたアンケート結果は『破棄した』と、事実と異なる説明を受け続けた」と家族は控訴審意見陳述で、静かな、しかし、根底的な怒りを表明している。家族の怒りは、損害賠償額の変更で収まるものではない。「自殺予見」を排除した一審横浜地裁判決に、「この結論では息子にいい報告ができない」という家族の怒りは、どこまでも正義である。「これ以上、自衛隊員の自殺を増やしたくない。息子の仏前で『自衛隊の責任がすべて認められるまで、これからも闘うから見守って』と話したい」という家族の怒りは非和解である。
「息子の文字はしっかりとした筆跡だった。強い意志を感じた。自衛隊在籍は1年2カ月。高卒後のカナダ留学で培った英語を海外での平和維持活動に生かしたいと就職した。死は突然だった」。だが愛する子供を国家・防衛省・海自に殺され、その上に、7年10ヶ月という長期間にわたり、国家・防衛省に「証拠隠蔽」のために嘘を繰り返され続けられてきた家族の怒り。
国家・防衛省・海自を信じていた家族の思いを裏切り、「不正義の証拠隠蔽」を根底から覆したのが3等海佐の内部告発・反乱である。3等海佐は、告発による自らの生活と家族に与える影響への不安と闘い、これを乗り越え、「防衛省、海上自衛隊が不利な事実、不利な文書を隠したまま『不正な勝利』を得てしまうことが我慢できない」と告発を決断した。これは不正を許さず、正義を貫いた3等海佐の隊内決起・反乱である。同様に開示された同僚の真実の証言(と開示文書)によって明白になったことは、1等海士は国家・防衛省・海自によって殺されたという事実である。弁護団は一審判決を「九割九分、主張が認められた」との評価であるが、違う。家族が目指すものの「一%」しか認めていない。

—————————————————–

軍隊とは 国家の暴力装置

(写真 日米共同 強襲上陸訓練 【2012年8・21~9・26 グアム島】)
(写真 日米共同 強襲上陸訓練 【2012年8・21~9・26 グアム島】)

軍隊・自衛隊とは、新自由主義・帝国主義国家の軍隊です。軍隊とは、本質的・現実的に1%の資本家の利益を護り、国家の利益を護るための国家の暴力装置なのです。そして戦争とは国家間の利害や意志を遂行させるために用いられる暴力行為であり、戦争を単純に捉えた場合、戦争の本質は暴力の行使です。したがって軍隊とは国家の利害、意志を強制するための国家の暴力装置なのです。 そして国家の利害・意志と労働者階級・民衆の利害・意志は非和解で相対立しています。これは原発の再稼動反対・廃炉を求めるフクシマの住民の意志、官邸前や国会前を中心に霞ヶ関一帯を再稼動反対・全原発廃炉を求めて埋め尽くしている数十万・数百万人の労働者・民衆の意志、そして意見公募聴取会アンケートでは89・6%が「原発ゼロ」の強い意志を表明している。これと原発再稼動・建設再開・原発輸出と核武装化を国策としている国家の意志というその対比だけを見ても明らかです。 要するに、繰り返せば、国家とは1%の資本家の利益のため、あたかも「国民」全体のために機能させる共同体のような幻想を与えているのです。軍隊はその幻想的共同体を護る暴力装置だということです。すでに3・11の「大地震・大津波・原発事故」とその結果が引き出した全事態とその後の国家の全対応が示しているように共同体というベールは完全に剥がれています。同時に3・11は資本主義・新自由主義が完全に破綻している姿を全世界の労働者民衆の前に明らかにしたということです。
しかし侵略戦争を遂行する不正義の軍隊、治安出動で反原発闘争を鎮圧せんとする軍隊・自衛隊ではありますが、それを構成している兵士は軍服を着た労働者とその子弟です。

※7月16日、代々木公園での反原 発集会・デモ(参加者17万人)に対し、自衛隊と在日米軍が共同で前夜から治安出動の待機態勢を 取っていました。

兵士も労働者も使い捨ての存在

労働者とその家族は生きるために軍隊・自衛隊に就職する任期制という非正規職の労働者です。兵士・自衛官も、労働者も、1%にとっては使い捨ての存在でしかないということです。それは戦場に送られる兵士と原発労働者に極限的に現われています。恐慌は大失業と戦争を意識的に生み出しますが、労働者が生活できないところに追い込み原発労働や軍隊=戦争に動員していくのが1%とその国家です。原発誘致でしか生けられないところに地域住民を追い込み、金をばら撒き住民を分断する、原発事故で関東に避難しても就職できず、東電が借り上げた避難場所からは3ヶ月で追い出され、結局、福島に戻るしかない。そして生きるために高線量被曝の原発作業や、ペテン的な除染作業に従事するしかないというところに追い込んでいるのが新自由主義です。東電が発表する10月の1号機建屋内の放射線量は10シーベルト以上、2号機建屋内が7シーベルト以上、3号機建屋内が1シーベルト以上というのが現状です。要するに「収束」どころか人間が接近すれば即死する状態なのです。 帰還した大熊町の住民は二人に一人が原発作業に従事していますが、原発で働くところしかないのです。 大嘘の「収束宣言」で原発労働者の防護服・マスクも安価なものに格下げされ、より被曝が高まっている。線量計に鉛を被せたり、外して作業をしている現場の実態は周知のとおりです。作業場の安全・保安闘争はより強化されていかなければならいのですが、真逆の事態が原発労働者に強制されているのです。廃炉の展望も出ていません。そもそも資本主義・帝国主義に原発事故に対処する技術力はありません。福島第一原発を除く50基の廃炉費用を各電力会社が積み立てていない現実も報道されています。廃炉費用は電気料金に含まれていますが、これは国家と電力会社が最初から廃炉の意思がないということの現れです。1%にとって危機が進行すればするほど、労働者・兵士に犠牲を極限的に転嫁し、人間としてではなくモノとして使い捨てる。これが新自由主義です。

戦争と軍隊が人間を破壊する

人間として不正義を看過したり、曖昧にすることはできません。それがプロレタリアートでありプロレタリア兵士です。「たちかぜ」訴訟における同僚の勇気ある真実の証言、3等海佐の決起はそれを明確に示しています。
しかし自衛隊や軍隊から「いじめ」「自殺」をなくすための「体質改善」などはありえません。なぜなら軍隊とは本質的・現実的に国家の暴力装置であり、外に向けての侵略戦争、内に向けての階級戦争への治安部隊としての暴力装置=機関だからです。 鋭角的に言えば「自己の人間的感情を殺し」、「殺されるまえに相手を早く、確実に殺す」ことを日常的に訓練しているのが国家の暴力装置である軍隊です。隊内暴力・いじめなどが明確に示しているとおり、自殺に直結する「いじめ」は軍隊にとっては「必要悪」として容認され、暴力行使の訓練に耐えられない者、自殺を選択する兵士は「役立たず」として「排除」すべき存在として位置づけられている。それが帝国主義軍隊・自衛隊です。沖縄の在日米軍による女性暴行事件が後を絶ちませんが、軍令や禁足令で解決できるものではありません。戦争と軍隊が人間(労働者・兵士)そのものを破壊していくのです。言い換えれば、人間性を破壊され、マシーン化した兵士によって軍隊は成立します。しかしこれはありえません。人間はあくまで人間であり、人間性が破壊されたとき怒りを爆発させるのです。イラク・アフガンで敗退した米軍兵士に驚くべき数の自殺やPTSD(心的外傷後ストレス)が発症し、自衛隊もイラク特措置法でイラクに派兵された帰還自衛官の驚くべき自殺率を防衛省が公表しています(後述)。自殺も怒りの爆発です。

正義の暴力と不正義の暴力

大別して暴力には二種類あります。

話が少し飛びますが、人類の全歴史は、太古の土地共有が解消して以来、階級闘争の歴史であります。社会発展のさまざまな段階において、差別・抑圧・搾取される階級と搾取する階級、つまり、支配される階級と支配する階級の間の闘争の歴史です。それぞれの発展段階における社会的変革は、搾取される階級の革命によって行われてきました。古い体制を打ち倒す革命は暴力をともないます。しかしこの革命的暴力には人間の差別・抑圧・搾取から人間を解放するという正義があります。これは人民による自発的・主体的な暴力行使です。この暴力行使には全人民の解放という普遍性があります。
しかし帝国主義軍隊の暴力行使は、1%の支配階級の利益を護り(内に向けた治安出動=階級戦争)、利益を拡大するための戦争(外に向けての侵略戦争)を遂行するための暴力行使であります。この暴力行使で犠牲になるのは国内・国外を問わず労働者・民衆・兵士です。この暴力行使は紛れもなく不正義の暴力です。 だからこそ、労働者・兵士・家族の団結した力、世界の労働者と兵士の国際的団結とその強化で軍隊を必要とする新自由主義・帝国主義国家を革命的暴力で根底から打倒しなければならないのです。

自衛官・米兵の自殺増加

陸自は04年~06年にイラク南部のサマワに計5500人を派兵、空自は04~08年に計3600人をクウェートに派兵した。派兵した自衛隊兵士のうち帰国後、12年8月までに25人の自殺を防衛省が公表した。陸自が19人、空自が6人。自衛隊全体の11年度の自殺者は78人、自殺率を示す10万人あたりの換算では34・2人。だが派兵され、自殺した自衛官を10万あたりに換算すれば陸自は345・5人で全体の10倍、空自は166・7人で5倍になる。兵士の自殺は一般公務員の1・5倍だがこの数値は異常に高い。陸自のイラク派兵期間中の3年間は毎年90人以上が自殺している。先日、潜水艦「そうりゅう」の艦橋部で3曹(20歳)の死亡が報道されたが自殺の可能性が高い。9月26日、空自3等空曹が国に損賠を求め名古屋地裁に提訴した。06年4月イラク派兵でクウェーのアリ・アルサレム空軍基地に通信士として派兵され、現地で、米民間軍事会社の大型トラックに背後から跳ねられ、重症を負いながら現地治療も行わずに放置され、緊急帰国措置も取られず、現在も口が1ミリしか開かない状態で障害認定され、怒りの提訴である。これらはいずれも氷山の一角です。
イラク・アフガンに派兵された米兵は推定230万人、帰還兵の30万人を超える兵士が外傷性脳障害などによるPTSDの後遺症に悩み、元米軍兵士の自殺が毎日18人前後、薬物依存と乱用、ホームレス化、DVなどが増加している。米軍では現役兵士の自殺がアフガン戦場での戦死者を超える事態に至っています。これは帝国主義軍隊としてもすでに崩壊していることを示しています。これらはすべて、不正義の侵略戦争と新自由主義が労働者・兵士に強制しているということです。

(写真 11・4集会で演壇を埋めた福島の労働者【2012年11月4日】)

(写真 11・4集会で演壇に並ぶ韓国民主労総 「原発を閉鎖せよ! 解雇は殺人だ! 非正規職を量産する外注化反対!」【2012年11月4日】)

闘う労働組合を再生しプロレタリア革命へ!

3・11以降、激しく進行していることは米軍と自衛隊の一体化です。国家財政の危機とイラク・アフガン戦争の敗退から打ち出されたオバマの新軍事戦略は日米韓同盟を軸とする同盟国・友好国による中国の軍事的包囲網であり、世界軍拡政策です。今、自衛隊の海兵隊化に向けた軍事訓練が強制され、オスプレイの配備・訓練が強行され、沖縄・全土出撃基地化が進められようとしています。 日米同盟とは憲法停止状態でおこなわれた「トモダチ作戦」がその有様であり、全原発を再稼動せよ、とアメリカは日本に要求している(8月、アーミテージ・ナイ・レポート)。 これに応え、野田も、安倍も改憲と戦争国家化に向けた動きを強めています。石原も橋下も同様です。戦争国家化とは自衛隊の帝国主義軍隊化であり、排外主義・国家主義の扇動です。すでに見た「領土問題」がそれであり、非正規職化による労働者の分断と団結破壊、労組解体です。
すべての元凶は一つです。労働者階級民衆・兵士の回答も一つだと思います。労働者・民衆・兵士は1%のブルジョアジーのために命を落としたり、みずから命を絶つようなことは断固、拒否しなければならない。99%に属する労働者・民衆・兵士は一つに団結し、99%の犠牲のうえにわずか1%のみが生き残ろうとする新自由主義の社会を根底から覆し、労働者階級民衆・兵士が人間らしく生き抜くために闘う労働組合を再生し、全職場と隊内からともにプロレタリア革命に向け、家族も起ちあがろう!共に闘いましょう!(滝山)