Rise 第51号 2018年10月10日発行
アメリカ帝国主義の対中国軍事戦略
改憲・戦争を止めよう!
安倍を倒そう!
写真上:2014年の「リムパック」。各国から参加した艦艇や潜水艦を率いる米海軍の空母「レーガン」
写真下:「日本にオスプレイはいらない!」。陸自木更津駐屯地で米海兵隊のオスプレイを機体整備。日米でオスプレイが計画どおり日本に配備されれば、いずれ51機が整備で木更津に飛来する
【I】 国境を超えた労働者階級の国際連帯で プロレタリア革命へ
滝山
安倍政権の凶暴性は脆さの現れ
戦後最大の階級決戦に突入した。9ー10月改憲決戦から11・4、2019年統一地方選、改憲・天皇代替わり、参院選の全過程が戦後最大の階級決戦である。改憲・戦争への安倍政権の突進は日帝の脆さ、脆弱性の現れである。総裁選の結果は安倍圧勝とはならず政権の脆さを晒した。自民党支持者からも安倍は「信頼できない」として拒否された。改憲・戦争に向け突進すればするほど、そのすべての過程と凶暴性が安倍政権の脆弱性に転化する。安倍は盤石な体制で突進できていない。
改憲・戦争反対は全労働者の思い
改憲・戦争反対は全労働者階級人民の圧倒的な思いである。
安倍が強行する労組解体ー総翼賛化攻撃、働き方改革ー総非正規職化攻撃への労働者階級の怒りは全国の職場・生産点で噴きだしている。新自由主義への怒りは全社会・全世界で巻き起こっている。沖縄7万人の決起や沖縄県知事選の結果は、安倍政権への根柢的怒りを示した。
新自由主義は労働者一人ひとりの人間性を破壊し、生きることすら奪っている。労働者階級への分断と破壊攻撃に対する怒りと反撃が全世界で噴き出している。労働者は新自由主義・帝国主義と闘うことによってしか生きられない。
戦後史を画する革命の時代
米中戦争、朝鮮戦争の切迫情勢は、戦後史を画する新たな戦争と革命の時代である。
南北会談、米中会談、中朝会談はそれぞれの自国ファーストの利害からバラバラに進み、そして破綻する。南北会談の真の狙いは、労働者の決起が朝鮮革命に発展することの圧殺にある。朝鮮半島の分断国家という歴史的特質から民族統一という「民族の念願」を利用し、煽り、体制維持と朝鮮革命の圧殺という共通の目的に韓国・文在寅と北朝鮮・金正恩が手を結んでいる。
没落米帝の国内矛盾の爆発と残存スターリン主義の根本的矛盾の爆発は、それぞれが反労働者的凶暴性を激化させながらさらに深まっていく。戦後体制の崩壊と矛盾の根本的解決は、プロレタリア革命によってしか不可能だ。本気で革命に挑戦し、マルクス主義と行動で革命を戦いとるということだ。
労働者階級は歴史的存在である。 階級情勢はこれまでとは画然と異なり、今までの在り方、闘い方においても画然たる飛躍と変革を求めている。改憲・戦争阻止の闘いが、戦争か革命かをめぐる階級戦争そのものとして全国で動き出している。11・4へ上りつめる大行進運動を前進させる行動と、反戦政治闘争と闘う労働組合・労働運動を全国でさらに甦らせていく拠点づくりの行動に絞り上げられている。
戦争国家化にむけた戦争動員・労組解体ー総翼賛化攻撃に対し、「教え子を再び戦場に送らない」と教育現場の労働者が動き出した。「戦争の手先になることを拒否する」と自治体労働者が現場から改憲・戦争反対の闘いに立ち上げっている。
改憲推進・徴兵制賛成のUAゼンセンの反動・反革命を職場で解体・粉砕する闘いも力強く前進している。
職場で、街頭で、地域で、全社会で、安倍政権を打倒する改憲・戦争阻止の大運動を全国でつくり上げよう。社会のすみずみで溢れている安倍政権への根柢的怒りを一つに束ね、安倍を打倒しよう。
改憲・戦争絶対阻止と池田自衛隊裁判は一つ
改憲を推し進めようとしている今の流れを変えよう。
憲法は「最高法規」。これに違反する法律はすべて憲法違反だ。「周辺事態法」や「安保関連法」、「働き方改革法」も憲法違反だ。そして戦争も憲法違反だ。安倍政権が強行成立させている法律は全て憲法違反だ。だから安倍は改憲に突進し、戦争法と自衛隊を合憲にさせ、さらに軍拡で戦争をやれる国家に変えようとしている。その行き着く先が「国及び国民の安全守る」という口実による「自衛」という名の侵略戦争と核武装だ。「国民」とは「日本国籍をもつ日本人」を意味する。在外日本人は約131万7078人(2015年外務省統計)。この「国民の安全を守る」ための「必要な自衛の措置」として戦争が世界に拡大する。
「被爆国」である日本の首相・安倍が「核兵器禁止条約」への署名を拒否しているのはそのためだ。差別の根源・天皇制に反対し、韓国と沖縄、そして戦争と核に反対する全世界の労働者民衆と連帯して、改憲と戦争を絶対阻止する。池田自衛隊裁判と戦争絶対反対は一つである。青年と兵士の獲得へ。階級的労働運動の前進が改憲と戦争を止める武器である。池田自衛隊裁判が「戦争の実態」を示している(前号参照)。
(写真 「ミサイルNO」。南西拠点化に向けた宮古島のミサイル基地建設現場。「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」とともに闘おう。基地撤去。ミサイルもいらない!)
緊急事態条項は内閣の憲法停止権限=ナチス的独裁
安倍は10月臨時国会での「短期決戦」で改憲を強行する腹を固めている。野党の無力性は「周知の事実」だ。安倍はこの野党の無力に助けられて延命できている。
自民党の「改憲素案」では、「大地震その他異常かつ大規模な災害」が起きたときは、内閣は「国民の生命、身体及び財産を保護するために政令を制定することができる」とある。「政令」とは国会で議決されるのではなく「内閣」が制定し、権利停止や徴用などを全「国民」に強制する法律となる。「緊急事態」「非常事態」宣言で憲法を事実上停止する。ここに安倍政権の狙いがある。
素案ではあたかも「災害」が発生した時に「緊急事態」を布告するかのような印象を与えているが、2012年の自民党改憲案にその中身が示されている。①外部からの武力攻撃、②内乱等による社会秩序の混乱、③地震等による大規模な自然災害、④その他の法律で定める緊急事態と規定が大幅に拡大し、「財政上必要な支出その他の処分」を行うことができる、と明記している。
そして国民保護法では、武力攻撃を「武力攻撃災害」と定義している。「災害」とは、武力攻撃により直接又は間接に生じる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出(※核戦争)その他人的又は物的災害と規定している。 要するに③の地震等による大規模な自然災害は緊急事態条項を新設するためのオブラートだ。ペテン的に記載されているにすぎない。 そもそも帝国主義の「地震」「大規模な自然災害」とは徹頭徹尾、治安問題であり、住民を救出するための規定ではない。西日本を襲った豪雨被害、北海道を襲った地震に苦しむ住民を安倍政権は放置し、見殺しにしている。
9条への「自衛隊」明記、「緊急事態」条項新設の次は、必然的に「徴兵性」「軍事(法廷)裁判所の設置」へと突き進む。
自衛隊現役の幹部・将校クラスは「天皇の軍隊」化を要求している。臨時国会で労働者の怒りで国会を包囲し、実力で改憲を阻止し、安倍を打倒するということだ。
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戦争切迫で米軍横田基地と、陸自木更津駐屯地も変貌する
2018年4月5日、CV22オスプレイ5機が米軍横田基地に着陸。米帝は2015年5月、CV22横田配備を「2017年後半に3機、21年までに計10機を配備する」と、日帝に一方的に通告(接受国通報)。そして18年10月1日、10機の内、5機の配備を強行した。米帝は2012年10月、米海兵隊普天間基地にMV22オスプレイ24機の配備を強行。そして陸自が導入するMV22Bオスプレイは17機。内5機が、2018年秋、整備工場のある陸自木更津駐屯地に配備され、定期整備も同駐屯地で行われる。反対住民と共に闘おう。
現在、日米のオスプレイ配備計画(予定)と配備済の計は51機となる。欠陥機が日本上空を低空飛行し(7つのルート)、整備のため51機が木更津に集中する。2012年1月10日、米アラスカ州から米陸軍兵約100人がC130から横田にパラシュート降下。その後パラシュート降下訓練が激化した。訓練は年間、延べ600人から1000人。物資を積んだ大きな箱の投下訓練も横田基地でおこなわれている。夜間パラシュート降下訓練は、対朝鮮・中国戦争を見据えた特殊訓練だ。2017年11月、パラシュートから外れた物資が基地内に落下、18年4月羽村第3中学校のテニスコートにパラシュートの一部が落下、訓練による事故が多発している。
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極右安倍が恐れているのはプロレタリア革命
改憲・戦争攻撃の根底にあるのはプロレタリア革命への恐怖。
古今東西すべての侵略戦争は、「自衛」の名で行われ、1%の支配階級の利益のために行われてきた。それは現在も同じだ。そのために資本家と安倍政権は、労働者民衆の分断と支配を強化し、非正規職化で搾取と収奪を極限化させ、青年・学生を貧困に追い込み、戦争にかりたてていく。東京オリンピックヘの大規模な「ボランティア」という名の「滅私奉公」は戦時動員の訓練である。「滅私奉公」がオリンピックへの「疑問」から「反対」に転化し始めている。
労働者民衆の間に国家主義、民族主義、排外主義、偏見のイデオロギーの楔を打ち込み分断し、相争わさせることで戦争に引きずり込んでいく。労働者民衆の利益とは無関係な資本家の利益のために「国民」や「兵士」に命を捨てさせ、あるいは奪わさせることによって侵略戦争が遂行されている。
池田自衛隊裁判は、国家が戦場に出た「兵士」を守らないことを示している。「沖縄戦」では国家は民衆を守らないことを歴史的に示した。
世界と全社会を実際に運営しているのは労働者階級民衆だ。
労働者民衆の真の敵は資本家・帝国主義とスターリン主義国家権力である。この真の敵に労働者民衆と兵士が団結して闘う。このことによって戦争を阻止することができる。そして労働者・兵士の団結、統一した闘いで安倍政権・国家を打倒することができる。
韓国の労働者民衆の「ローソク革命」がパククネを監獄に叩きみ、打倒した。安倍政権と全ブルジョアジーはこの力を心底から恐れている。
新自由主義の総破綻が世界を覆い、全労働者民衆を低賃金の非正規職化に叩き込み、人間として生きられない、結婚や子供を産めない賃金を強制している。新自由主義の破産が戦争(世界核戦争)を引き寄せ、生きらないところに追い込まれている労働者階級民衆は闘うことによってしか生きられない。革命によってしか人間性を回復できないところに突き当たっている。「戦争か革命か」という情勢を加速さている。
改憲と戦争で労働者階級民衆の闘いを解体し、革命を圧殺する。極右・日本会議の安倍政権の狙いはここにある。そのための働き方改革=労組解体攻撃、革命労組解体・階級的労働運動の解体攻撃である。だがそれは無理だ。なぜなら労働者階級人民の怒りは必ず革命に転化する。人類の歴史は、圧倒的な被抑圧階級人民の非和解・非妥協の闘いによって社会が革命されてきたことを示している。
安倍政権を倒し、国際連帯で全世界の労働者の未来を切り拓こう
安倍政権を倒し世界の 労働者の未来を掴もう
(写真 日本・世界の空にオスプレイはいらない。オスプレイ木更津配備反対・現地闘争 「池田自衛隊裁判をともに闘う会」も「住民の会」とともに決起【2016年11月】)
大嘘と開き直りでどこまでも生き延びようとする安倍政権を打倒することは、日本のみならず、アジア、全世界の労働者民衆の命・生活・未来がかかった課題である。
このことを韓国、アメリカ、中東、世界の労働者同士で確認し、労働者階級の国際連帯の強化で自国帝国主義を打倒する。世界の労働者は階級として一つ。労働者に国境はない。世界の全労働者階級と被抑圧民衆が一つに団結したとき、真の敵である全ての帝国主義ブルジョアジーを、スターリン主義を打ち倒す国際的軍勢として、プロレタリアートの同盟軍に発展させることができる。労働者民衆一人ひとりが国際的な兄弟姉妹として、国際的軍勢として自覚して闘うことによってすべての戦争は阻止できる。全ての労働者と被抑圧民衆の団結と国際共同行動で世界戦争を阻止し、すべての核を廃絶する。
国際連帯の力強い発展で核戦争の危機を打ち壊そう
米朝会談は破綻し、最後的には決裂せざるを得ない構造になっている。その基底にあるのが米中の貿易戦争の激化がある転換点で軍事対決に転化する(後述)。米帝の没落は経済問題などすべてを「安全保障問題」に公然と転化せざるを得ないところにまで追い込まれている。そこからの巻き返しをかけた貿易戦争は、軍事的対決へと突き進まざるをえない。米中貿易戦争は3度目の世界戦争(核戦争)への歯車を加速させている。今求められているのはこの歯車の回転を止め、歯車そのものを打ち壊す労働者階級民衆の国境を超えた国際連帯の力強い発展である。
米・日・中・韓労働者階級の国際連帯の前進・強化が不可欠であり、それが革命の土台となる。分断された労働者の一人ひとりの力は無力かもしれない。だが、世界単一の階級として団結した労働者の力は無限の力を発揮する。この力を世界史的に初めて示すのはロシア革命を発展させる労働者階級のこれからの課題だ。
一人ひとりが決断し、決然と国際連帯の自覚で国際共同行動にともに起てば戦争の根源である帝国主義ブルジョアジーを倒すことは可能である。国境を超えた「労働者と兵士の団結」で世界革命を! それが唯一、世界核戦争を阻止する道である。
池田自衛隊裁判(前号参照)は、改憲・戦争阻止の闘いと一体であり、労働者と兵士が団結をつかみ取るための闘いである。
星野同志奪還闘争を水路に改憲阻止の大行進運動を
階級闘争の核心は、いずれも力関係で決するということだ。だからこそ「運動と組織を拡大する」実践・行動の中に革命の展望がうみだされる。
全国で切り拓かれている「星野闘争」を水路にしながら「改憲・戦争阻止」の大行進運動を全国で拡大するということだ。求められているのは1000万人と結合する総合的力である。総合力とは職場・生産点の労働者が求める全課題に革命党と階級的労働運動が総力で応える組織的力である。
池田自衛隊裁判は全労働者階級の共通の闘い
池田自衛隊裁判は、安倍政権の改憲と戦争国家化と対決する闘いである。1%の支配階級の利益のための米中戦争へ自衛隊員とその家族を動員する安倍政権と対決する闘いである。したがって池田自衛隊裁判は、戦争を拒否する全労働者と兵士の共通の闘いだ。池田自衛隊裁判を共に闘い勝利しよう。
帝国主義軍隊は崩壊する
2015年6月5日付けの政府答弁書では、イラク戦争で在職中に自殺した自衛官は56人である。 2001年のテロ特措法でインド洋上での給油活動に派兵された海自隊員の内、25人が自殺している。延べ動員数でみれば、海自が約1万900人、空自が約2900である。
2003年のイラク特措法で派兵された海・空自衛隊員29人が在職中に自殺した。
延べ動員数は陸自が約5600、空自が約3630人、海自が約330人。
2008年の補給支援特措法で派兵された海自隊員の自殺は4人。内2名はテロ対策特措法に基づく活動に従事し、自殺した。延べ動員数は海自約2400人。
2014年内閣府統計の年間自殺者と比較すれば約12倍の高率である。
イラク・アフガン帰還米兵200万のうち60万人以上がPTSDを発症。12年の帰還米兵の自殺は320人。この年の米兵の戦死者は311人(米陸軍公衆衛生司令部公表)で自殺が戦死を上回っている。帰還米兵の自殺者は1日に22人だ!これは過去2ヶ月間の平均数だ。単順に計算すれば年間の自殺者は8000人になる。1%の利益のために行われる戦争が、兵士と家族、労働者を根底から破壊している。だがそれ自体が帝国主義軍隊を内部から崩壊させている。帝国主義軍隊を階級的労働運動の前進と革命で解体し、池田元三等空曹とともに闘い、兵士を革命に獲得する。池田自衛隊裁判を兵士獲得・組織化の武器に転化しよう。
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「池田自衛隊裁判をともに闘う会」の」新リーフが出来ました。「ともに闘う会」会員拡大にぜひ活用してください。
池田元3等空曹のアピール
「改憲で9条に自衛隊を明記することで、『自衛のため』と隊員も国民も騙して戦争に向かわせようとしています。どこの国の労働者市民に対しも銃を向けることを隊員は望んでいません。外に向かって戦争はしないというこれまでの約束を踏みにじる安倍政権を何としても倒しましょう」
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【Ⅱ】アメリカ帝国主義のインド太平洋戦略
対中国軍事戦略は リバランス戦略
米中戦争
トランプ政権の「国家安全保障戦略」と「国家防衛戦略」は、2001年9・11同時テロ以降のブッシュ政権がシフトした対中東戦略ー「非対称戦争」の二正面戦略、そしてオバマ政権がシフトしたアジア・太平洋への「リバランス戦略」からの「インド・太平洋戦略」への転換である。
だがこの転換は、没落米帝が中国の台頭と「一帯一路」戦略に対抗したものであるが、しかし米帝の対中国軍事戦略の基幹は、オバマ政権時に米帝が策定した「リバランス」の「エアーシーバトル」戦略であろう。
トランプ政権は1・29「米国家防衛戦略」で北朝鮮やイランを「ならず者国家」と評し、中国・ロシアの台頭を「修正主義勢力」と規定し、世界体制を変える勢力と批判、弾劾している。
そして米国防総省はこれらの世界の「脅威」に対抗するため「米軍再建」と「核戦力の近代化」路線を押し出した。トランプは一般教書演説で、「核兵器のない世界」(2010年・オバマ)を修正し「核兵器の近代化と再建が必要だ」と強調し、新NPRで低爆発力の戦術小型核の新規開発と配備を発表。これは無制限の小型戦術核配備やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)への配備を含んでいる。オバマの「NPTを順守する非核保有国への核先制不使用」宣言も否定した。
オバマは米国家財政の膨大な赤字で「現存しない脅威のために予算を割かない」と新たなミサイル防衛技術の開発計画を打ち切ったが、トランプ政権はこれも転換した。対中(露)戦争を見据えた「宇宙戦略軍の創設」、「レーザー兵器」による弾道ミサイルの破壊、迎撃ミサイルの多弾頭化など、「新弾道ミサイル防衛戦略」も発表した。
米国防総省は、2020年までに「宇宙軍創設」を表明。構想はペンス米副大統領が示した。構想の背景は、中ロの急速な宇宙開発に対する危機感である。
米帝は情報収集から陸海空における部隊連携、精密誘導爆撃、ミサイル防衛に至るまで、米軍の活動・作戦運用は衛星などの宇宙資産に依存することで成立し、優位性を保持してきた。
中国は「衛星攻撃兵器」の開発を進めており、「衛星の無力化」を軍事課題にしている。中国はすでに自国の「使用済み衛星」を宇宙での破壊に成功している。米空軍は現在、GPS衛星31機を保有しているが、これらの衛星は攻撃を受けることを前提には製造されていない。レーザーやミサイル攻撃に対して容易に破壊されたり、妨害電波で無力化される弱点を持っている。
ウィルソン米空軍長官は6月、米議会で「将来起こり得る戦争は、必ず宇宙空間を巻き込むと想定すべきだ」と証言し、指揮・統制・情報や「先制攻撃の無力化」などを目指した宇宙兵器の開発に乗り出している。無力化された一方が、あるいは無力化される前に核攻撃に至る可能性が高まることになる。
米帝トランプの国家安全保障戦略は、世界戦争=世界核軍拡への突進であり、本質的には世界プロレタリア革命の圧殺・解体戦略である。それは同時に労働者階級人民と人類を破壊に導く国家戦略だ。トランプ政権の現状破壊的「国家戦略」は、没落米帝の危機の深さを現わしていると同時に没落米帝の危機と破滅をいっそう促進させ、全世界の労働者階級人民の根柢的怒りを引き出し、プロレタリア世界革命情勢を加速させる。労働者階級に求められているのは革命に転化するプロレタリアートの国際的力と自国帝国主義を打倒する組織的実力だ。
(写真 習近平は2016年、「7大軍区」を「5戦区」に人民解放軍を再編し、陸海空軍を一体運用する統合作戦の指揮機構を「戦区」内に設置。陸軍中心の軍隊を改変し、30万の兵士を削減。国防省前で抗議デモを行う人民軍兵士。)
米中貿易戦争の激化は軍拡と戦争を促進している
帝国主義間・大国間争闘戦で今日もっとも深刻で危機的なのが、米中の対峙・対決、米中の争闘戦の激化ー米中戦争である。米中戦争は世界核戦争の危機をはらんでいる。トランプは大恐慌で促進された基軸国としての没落を世界の暴力的再編成によって突破するという方向へ舵を切った。
トランプ政権は、周知のとおり7月、中国からの輸入340億ドル(818品目)に25%の追加関税をかける第1弾を発動した。これに対し中国は即、米からの輸入340億ドル(545品目)に25%の報復関税で応じた。8月、米帝は第2弾として160億ドル(279品目)に25%の追加関税を発動し、中国は同時に160億ドル(333品目)に25%の報復関税を発動した。9月24日米帝は第3弾として輸入金額2000憶ドル(5745品目)に10%の追加関税を発動。第3弾は、これまでと比べ、ハンドバッグや家具など生活関連の品目が多い。製品価格の上昇で個人消費に影響が出るため、年末商戦を控えて年内は10%の関税を上乗せし、来年1月から税率を25%に引き上げる。
これに対し中国商務省は、発表済みの液化天然ガス(LNG)など計5207品目の米製品に5%か10%の関税の上乗で報復し、米中の貿易協議の中止を表明。中国側は追加関税以外の報復手段として、米の産業に重要な素材や部品の対米輸出制限にも言及。
これに対しトランプは第4弾として2670億ドル相当の輸入品に制裁を講じると声明。発動すれば中国からの全輸入5050億ドル分すべてに追加関税を課すことになる。ますます泥沼化していく。そして米帝議会は中国への人権問題での制裁措置など、あらゆる口実を通して中国・習近平に屈服を迫っていく。経済戦争の軍事への転換が迫っている情勢である。
トランプは日帝・安倍政権にも「ディール(取引)がまとまらなければ大変なことになる」と脅しをかけ、日米の軍事的一体化への争闘戦を激化させている。
米中の経済関係は相互依存化してきた。中国が対米貿易黒字から蓄積した外貨準備を基礎に米帝の土台をゆるがすほどの大きさで米国債を大量に保有し、そのことを事実上の武器として人民元の国家管理をもって為替戦争を展開し、米国市場になだれ込んでいた。中国にとっては人民元問題は死活的な大問題である。元高が一定の限度を越えるならば、中国国内の企業が次々と倒産する事態となる。「一帯一路」の資源は、人民元変動とも関係してくる。人民元価値が下がれば、対外投資の元金が増大するだけでなく、国内から国外への資本流出に歯止めが利かなくなる。
今日の中国は、低賃金と強権的スターリン主義支配の重圧の下で労働者階級人民を抑えつけ、治安強化で維持できている。膨大な国内治安政策費は「隠れた軍事費」とさえ言われ、労働者のストと蜂起が中国全土に一挙に拡大する危機をはらんでいるという現実に直面している。さらに中国スタ・習近平は、新疆や中央アジアに民族問題、テロ・治安問題といった政治リスクを抱えている。
これらのため習近平は、北朝鮮・金正恩体制の護持とともに貿易戦争と人民元レート問題は米帝・トランプに絶対的にゆずることができない死活問題であり非和解的対決に打って出ざるをえない。
これに対し米帝・トランプは、外交・経済分野での制裁を極限化させていくことで基軸国からの没落を突破する道として世界の暴力的再編に踏み込んだ。
(写真 中国の新型ICBM「東風-41」近く実戦配備される。最大射程は1万2000㌔。5・27に10回目の発射実験)
中国 「一帯一路」の破綻
だが中国も引けない。引けば国内政治・経済危機が拡大し、挫折している「一帯一路」の破綻が拡大する。「一体一路」に対しては、「中国版植民地政策」といわれ、途上国からは「悪徳金融」といわれ、中国銀行・国内企業からは「投資ノルマ」や「債務不履行」に不満と怒りが爆発している。
マレーシャのマハティールは8月、返済不能になる借金を回避するために「一帯一路」に関連する鉄道建設など大型事業の中止を表明した。中止によりマレーシャは中国に47億ドルの賠償金を支払い、3ヶ月以内に借款と利息を完済しなければならない。他にもガスパイプライン建設計画など共同プロジェクトは総額800億ドルに達し、取り消しは負担が大きいが返済不能による国家破綻のリスクを回避する道を選択した。
スリランカは南部の港の開発事業の借金が返済できず、昨年末に99年間の港湾運営権を中国に奪われた。港は中国の軍事拠点となる。 南太平洋のトンガは8月16日、中国に対し「団体交渉」で債務取り消しなどを求めようと周辺国に呼び掛けている。
中国・習近平軍事力の強化で対抗
中国の国内矛盾はすでに爆発している。砂漠を横断するような高速鉄道や高速道路の機能維持、メンテナンス費用は膨大になる。長期戦略として党規約の前文にまで「一帯一路」を明記した習近平には、国内反対派を粛清しつつも軍事力の強化で対抗するしかない。 実際、中国スターリン主義は、人民軍の再編強化・統合指揮、軍拡と南中国海、東中国海の人工島建設と軍事拠点化を急速に進め、「A2/AD(接近阻止・領域拒否)」の軍事力の強化に突進している。地対艦ミサイル、地対空ミサイル、レーダー網、戦略爆撃機(H‐6K爆撃機+長距離対地巡航ミサイル)、ステルス戦闘機、空母、潜水艦、宇宙・衛星攻撃兵器、サイバー空間など軍事予算も拡大している。
米中の経済戦争は軍事力の行使という戦争に転化する世界史的情勢が始まったということである。米中貿易戦争を元に戻すということはあり得ない。帝国主義間・大国間争闘戦は、それぞれが後のない死活的レベルに達している。それだけに非和解的に激突していかざるをえない。戦後基軸国である米帝の没落・衰退、ロシアの衰退、中国の台頭と国内外政策の破綻が示している現実は、「恐慌と戦争」への道を加速させている。
改憲・戦争に突進する安倍を監獄へ
日帝・安倍の改憲・戦争への突進は、米中戦争を基軸とするこの世界史的情勢に規定され、衝き動かされているということだ。安倍政権は米帝の没落の速度と一体で対米争闘戦を激化させつつ、日米の「軍事的一体化の強化」で延命する道しかないという矛盾に満ちた脆弱性を全面的にさらしている。日帝・安倍政権に残されているのは改憲・戦争と核武装への突進か、労働者階級民衆の怒りで監獄にぶち込まれるかのいずれかだ。
言い換えればこの世界史的情勢は、プロレタリア世界革命情勢として真っ向から捉え返し、「ゼネストで革命へ」を実現する階級的労働運動を全国と全世界の労働現場・生産点で建設するということである。
労働者の解放は労働者自身が行う世界史的事業である。労働者階級は国境を超えた世界単一の階級である。国際連帯の強化とプロレタリア世界革命への突破口が改憲・戦争阻止、国際共同行動の11・4労働者集会だ。
米中貿易戦争の軍事転換の切迫
米中貿易戦争の軍事への転換が切迫している情勢下、改めて、明らかになっている米帝の対中軍事戦略とその軍事的展開を見ておきたい。
オバマ政権下の2016年1月、ワシントンのシンクタンク、「戦略国際問題研究所(CSIS)」が「アジア太平洋・リバランス 2025」という報告書を公表した。そして、同年8月、シンクタンク、「ランド研究所」が米中戦争をリアルに予測した「中国との戦争」という報告書を公表した。
前者では、「政権のリバランス戦略への取り組みが、米国の利益を確保する上で不十分である恐れがある。中国や北朝鮮は日常的に米国の信頼性に挑戦し、地域における軍事バランスは米国にとって不利な方向に移行している」として、中国が2030年までに複数の空母打撃群を保有する可能性が高いと指摘し、「米国にとってのカリブ海やメキシコ湾と同じように、南中国海が事実上、中国の湖になる」と警告を発した。具体的には、中国が弾道ミサイルや巡航ミサイルを含めた「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力を向上させていると指摘した上で、(1)米海軍横須賀基地などを候補地として西太平洋への2隻目の空母を配備する、(2)自衛隊と米軍による統合作戦司令部を設置する、(3)ミサイル攻撃への米空軍・嘉手納基地、グアム・アンダーセン空軍基地の脆弱性に対処するためオーストラリア、フィリピンの基地活用などを提言している。
(写真 核実験が行なわれたネバタ州の核施設 米帝・トランプが昨年12月、核実験を強行。「核兵器を使える兵器にする」(トランプ)。5年ぶり、28回目の臨界前核実験。「製造から時間が経過した核兵器の信頼性を評価することが目的」とされているが、小型戦術核配備に向けた核実験だ。今年12月にも新技術の性能核実験が計画されている。)
ランド研究所「中国との戦争」
後者の「ランド研究所」の報告書は、「中国との戦争」の予測期間は2025年までと限定しながら、その報告書の概要・結論は、近い将来に米中戦争が起きた場合は米帝が「有利」だが、2025年に近い時点での戦争では米帝が「不利」になるとの予測を発している。また別の機関では2030年頃にはGDPでも米中逆転が起こるという予測もある。一つの大国が永遠に大国であり続けることは不可能である。
以下は「ランド研究所」の報告書をベースに米中戦争に対する米帝の軍事戦略を見ていく。
(1)報告書は、米中戦争の規模などは以下のようになるだろうと予測している。
①米中戦争は非核の通常戦力による戦闘となる。通常兵器での戦闘が激しくなっても、核兵器は使われないだろう。
②戦闘では主に水上艦艇、潜水艦、航空機、ミサイルが用いられる。宇宙とサイバー空間も戦場となる。
③戦闘は東アジアで始まり、東アジアで続くが、西太平洋の広大な地域も戦場となる。
④中国は米本土への攻撃は行わない。
⑤米は逆に中国本土へ激しい攻撃を加える。
⑥地上戦闘はほとんど起きない。
(2)報告書は以上のように米中戦争の展開を予測し、さらにその「戦闘の形態」については、①「短期で激烈」、②「長期で激烈」、③「短期で軽微」、④「長期で軽微」の4つのパターンを挙げていた。
それぞれのパターンついて、経済や政治など非軍事面での両国の損失を推定し、戦争の帰趨までを予測している。
その予測では、数日から数週間の「短期」の場合、そして今から近い将来に戦争が起きた場合には、米帝が圧倒的に有利との判断を下し、一方2025年に近い時期に米中戦争が起きた場合は、中国軍が「A2/AD(接近阻止・領域否定)」戦略の戦闘能力を着実に強化している現状で、勝敗の決まらない膠着状態となる可能性が高いという評価予測である。
(3)硬直状態は日帝の参戦で、米帝に有利となる
報告書は、米中戦争の帰趨についても日帝の動向ー参戦が決定的な要因になるとして以下の点を強調している。
①米中戦争において、米国の同盟国、友好国の動きはきわめて重要だ。中でも日本の役割は決定的となる。特に2025年近くの米中戦争では、日本の潜水艦水上艦艇、戦闘機、ミサイル、情報・監視・偵察(ISR)などの能力は米側にとって不可欠な基本戦力となる。
②米中戦争が長引けば長引くほど、日本の軍事的な対米協力の効果が大きくなる。日本の参戦で、米軍は他の地域の米軍部隊を中国との戦争に転用する必要が減るだろう。中国軍にとって、日米連合の部隊と戦うことは困難になる。
③中国軍は2025年頃までには、年来の対米軍戦略の基本である「A2/AD」戦略の能力を大幅に高め、対米戦を勝敗のつかない長期戦に持ち込むことができるようになる。しかし、日本が米軍を全面支援することで均衡は変えられ、米軍は有利になる、としている。
米中貿易戦争の激化は、同報告書の予測・評価にむけた米中戦争の現実性を示している。
(写真 第一列島線と第二列島線は、中国のアメリカ帝国主義に対する防衛ライン。真珠の首飾りはインドに対する戦略拠点。)
トランプ政権の登場米帝危機の深化
だが報告書が作成された2016年当時との決定的相違がある。それは恐慌の深化と没落米帝の危機の深化の中から現状破壊者としてのトランプ政権の登場である。
報告書は「通常兵器での戦闘が激しくなっても、核兵器は使われないだろう」と予測し、「中国は米本土への攻撃は行わない」が、「米は逆に中国本土へ激しい攻撃を加える」という軍事的展開を見積もっている。だがトランプは戦術核の小型化と配備に踏み込みこんでいる。
崩壊的危機の淵に立った北朝鮮・金正恩が延命と体制保障のための対米戦略として「核とミサイル」を武器にしたように、没落米帝の最後の武器もまた「核と核戦争」である。戦術核の開発と配備の具体化がそれを示している。
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◆前方展開戦略とは、積極的介入、米一国単独行動。 同盟国の役割は、前方展開基地の提供・防護。
◆オフショア・バランシング戦略は、「新興国の経済成長による米国の経済支配の崩壊に伴い、米国が優位性を維持できない状況において、米国による覇権戦略に代替する」というもの。言い換えれば戦争を起こさないために中国の地域覇権を認め、米帝の「安全のみを最優先する」可能性が秘められた戦略。「新孤立主義」ともいえる。この戦略における同盟国の役割は、「米軍事力の肩代わり」。同盟国、友好国に、「米軍事力の肩代わり」を要求するこの戦略には、韓国の米陸軍第2師団及び在日米空軍・在韓米空軍の撤退が視野に入っている。 米日韓豪などによる対中バランスオブパワーの維持。これは「領土を守る意志のある国」と組みながら中国の海上貿易を阻止し、決定的な軍事上の勝利よりも、「手詰まりと停戦をもたらすことを目標」にする。日帝の軍拡と戦争国家を促進する。
◆オフショア・コントロール戦略は、核保有国である中国の「A2/AD」戦略に対して、米帝が「エアシーバトル」を適用し、中国本土を攻撃することは核の応酬にエスカレーションする可能性があるのでリスクが大きすぎる。中国の弱点である輸出依存経済に着目し、第一列島線を使って中国海軍を東中国海と南中国海に閉じこめつつ、中国の戦闘能力の届かないマラッカ海峡やスエズ運河、パナマ運河など遠隔地域(オフショア)で中国の輸出コンテナ船を臨検・進路変更させ、経済的に中国を疲弊させることで、「中国のメンツを立てつつ原状を回復して戦争を終結する」というもの。
だが中国の南中国海での人工島の建設と軍事拠点化の強化が進行している。「自由の航行」の脅威はすでに現実のものとなっている。この戦略における同盟国の役割は、「第一列島線の制海・制空権」を確保することである。
◆前方パートナーシップ戦略は、前方展開重視の従来戦略を海軍力と特殊作戦部隊で維持しつつ、同盟国やパートナー国の共同作戦能力を強化し、地域で同盟国やパートナー国の主導を促すという新たな要素を加えたものである。米国家財政の危機と歳出の強制削減により、米帝は「より少ない資源・戦力でより危険な世界に立ち向かう必要がある」ことから、パートナー・同盟国の責任分担の増加、パートナー国との「自由貿易協定等による経済強化」により、パートナーシップの拡大強化を図るという戦略、この考え方が米帝中枢に根を下ろしつつあるといわれてきた。この戦略における同盟国の役割は、「海軍・特殊部隊の前方展開基地の提供、有事基盤の提供」である。
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4つのオプション
核保有国である米中が核戦争を回避するために米軍は中国本土への攻撃を行わないという分析や「相殺戦略論」者もいる。 また米帝のアジア・太平洋戦略における「4つのオプション」として、「前方展開」、「前方パートナーシップ」、「オフショア・コントロール」、「オフショア・バランシング」戦略などが論じられている。だがこれらのオプションは没落米帝が「米中戦争を有利に終結させる」ための苦肉の戦略である。没落米帝の現実的な力関係では容易でない。 冷戦で旧ソ連を崩壊に導いた米帝が中国に対して「新たな冷戦」を開始したという評価もあるが没落米帝と米軍にはその力は最早ないのが現実であろう。だから米帝・トランプは戦術核の小型化開発と核戦争への道筋を敷いているのだ。労働者階級人民によって打倒される道しか帝国主義、スターリン主義には残されていない。
要するに、これらの戦略は没落米帝の現実から、いかに米帝が延命するかを模索し、もがき、あがいている「軍事戦略」が浮き彫りになっている。そしてこれらの戦略に共通するのがイラン、北朝鮮、ロシアなど「ならず者国家」「修正主義国家」への経済制裁による経済危機と疲弊を強制し制圧せんとする戦略が一体であるということだ。
北朝鮮・金正恩は延命のために全存在をかけて没落米帝の現実を逆手にとっているということだ。 ※イラク、中東などで米特殊部隊が現地の軍隊を訓練し、育成し、反政府勢力との戦闘を維持・展開させる戦略を実施している。これは「前方パートナーシップ戦略」の転用といえる。
米中戦争勃発の契機
ランド報告書は、2016年当時の「米中戦争が勃発する契機」として以下の事態を想定している。
①東中国海の釣魚台(尖閣諸島)などをめぐる日中両国の軍事摩擦。
②南中国海での中国のフィリピンやベトナムへの軍事威圧。
※海自は9月13日、南中国海で潜水艦と護衛艦3隻の計4隻による日中、米中戦争を想定した潜水艦攻撃の訓練を実施し、公表した。
③北朝鮮の政権崩壊に伴う米中双方の朝鮮半島への軍事介入。
④中国の台湾に対する軍事的な攻撃あるいは威嚇
⑤「排他的経済水域(EEZ)」とその上空での艦艇や航空機の事故、などである。
※上記の「契機」を超え、2年後の2018年、既に「米中直接戦争」情勢に突入している。
米帝の北朝鮮先制攻撃の破産
2016年、北朝鮮が5度目の核実験を強行した。
米本土に届く弾道ミサイルも発射していた。翌17年には「水爆実験に完全に成功した」と発表(国営テレビ)。当時オバマは国家安全保障会議(NSC)にサイバー攻撃による先制攻撃で核開発計画の無力化の検討を指示し、国防総省に対しては北朝鮮の核施設への軍事攻撃の検討を指示した。
サイバー攻撃は、北朝鮮のサーバーが中国にもあり、中国のサーバーを攻撃せざるを得ないことが判明した。中国のサーバーを攻撃し、中国からの報復が実行された場合、「反撃をすべて食い止められる保証はない」という報告を受け、オバマはサイバー攻撃を断念した。
核施設への軍事攻撃に関しては、「施設の85%は無力化できる」。だが、残る15%の施設から核ミサイルが1発でも発射されれば韓国人数万人と在韓米軍が犠牲になる。さらに核施設への軍事攻撃の最終的な手段としては「地上軍の投入ー侵攻」しかないとして、国防総省の報告でオバマはこれも断念においこまれた。
金正恩暗殺(作戦計画5015)に関しては、CIAがステルス爆撃機による複数の計画を進行させていたが、計画は実行されていない。
要するにこれらの事実は、「100%の確率」で「軍事目的が100%達成」され、更に「敵からの反撃がゼロ」でなければ、米帝といえども発動できないことを示している。
政治・軍事目的が100%、確実に達成できなければ、先制攻撃後のリスクが巨大なものに転化するという危険性があるということ。。
オバマが断念した根底には、北朝鮮への先制攻撃の発動が生み出す結果によって、オバマが打倒され、世界の労働者の怒りが革命に発展するという事態の前に、米帝オバマは作戦を断念したということだ。
(写真 2016年、中国が西沙諸島の最大の島、永興島に地対空ミサイルを配備。中国がこの種のミサイルの最初の配備先として永興島を選んだのは、北西250マイル先に潜水艦基地・海南島があるから。中国は1990年に滑走路を建設し、15年には、J-11戦闘機を配備。西沙諸島周辺の空域をコントロールしている。)
米帝の対中戦略と安倍政権の参戦策動
米戦略予算評価センター(CSBA)や 国防大学(NDU)、海軍大学(NWC)で策定さている「改良エアシーバトル(ASB)」と相殺戦略(OSS)が米帝の対中国軍事戦略・戦術の骨幹とみなされている。
その前提には、「空母は敵に発見されやすく撃破されやすい」という認識と、「宇宙ももはや米国にとって聖域ではない」という軍事的前提がとられている。
改良エアシーバトル
改良エアシーバトルでは、中国との開戦当初、海兵隊を含む海空戦力はグアム以東に後退するとともに、核戦争になることを抑制するために中国本土への攻撃は控える、としている。
戦略爆撃機や空中給油などによる長距離攻撃と数か月から1年を視野に入れた長期戦(海上封鎖を含む)に勝利を求めている。さらに原潜、艦船、哨戒機などによる水中の制圧・支配と電子戦による中国軍の指揮・命令・情報の無力化を重視している。
要するに「核戦争を回避するため」に中国本土への攻撃を行わず、主戦場を海洋に限定し、潜水艦を含む軍艦を沈めることで勝利する、という米海軍の戦術を発展させ、中国軍の攻撃を回避するために米軍をグアムなど広域に分散させ、中国のミサイル攻撃を回避できる長距離から多数の対艦ミサイル攻撃により艦船を撃滅し、中国軍を第一列島線内に封じ込め、衰退させるという戦略である。
中国本土を直接攻撃しなくても、中国艦隊を撃滅すれば中国の軍事的覇権の意思を断念させることができるという考え方に基づいて策定されている戦略である。台頭し、軍拡を進める中国との戦争は、米帝にとっても生き延び、勝利するのは容易ではないという認識が示されている。
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◆第三の「相殺戦略」の概念は、戦後の「米国の平和(パックス・アメリカーナ)」を支えて来た米帝の軍事力の優位を再び取り戻そうということである。中露に対する「最新通常兵器」とは、空中の無人機、海中の無人潜水艦、そして敵の戦闘管理ネットワークを無力にする陸上の最先端システム、つまりサイバー攻撃技術である。さらに小型レールガン(音速の7倍で弾丸を発射)や現在より小型の高性能爆弾などを挙げている。
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自衛隊の参戦が前程
米中戦争には日帝・自衛隊の参戦が前程、不可欠となっている。
米中戦争の主戦場となる第一列島線とは日帝が主張する「日本の領土・領海内」を含んでいる。南西諸島への自衛隊の配備、レーダー基地と地対艦ミサイル(SSM)、地対空ミサイル(SAM)の配備、強襲揚陸艦と日本版海兵隊部隊ー水陸機動団の創設・配備が日帝独自の軍拡であると同時に米帝の対中軍事戦略に即した計画的配備であることが明解となる。
2018年8月のリムパック(世界最大級の多国間「環太平洋合同訓練」)では、中国軍の参加を排除した。そして南中国海・東中国海における中国艦艇・戦闘機を撃滅する訓練として陸自の地対艦ミサイルの実射訓練、地対空ミサイルの実射訓練を取り入れ実施している。米軍には地球規模での地理的関係から地対艦ミサイル配備の必要性が排除ないしは軽視されてきた。米中戦争の切迫と対中軍事戦略上、米帝は陸自の地対艦ミサイルに着目し、その能力を実射訓練で確認しているということだ。
ハリス元太平洋軍司令官が南西諸島への自衛隊の配備ーレーダー、長距離地対艦・地対空ミサイル配備に着目し、これを米陸軍にも採用し、「中国軍の船を沈めよ」という号令で米中戦争の軍事戦略を集約させている。南西諸島、フイリピン、豪など第一列島線に陸自や当該国軍隊、米陸上部隊を配置し、長射程の地対艦ミサイル、地対空ミサイルで「阻止線の壁」を構築し、これに守られて米海軍・空軍の各種対艦ミサイルの飽和攻撃で中国艦艇を撃滅するということである。
要するに南西諸島や第一列島線の軍事拠点化の質量的な規模によって対中軍事戦略の作戦の持久力が決まり、「対中軍事戦略」の成否を決するという米軍の考え方が示されている。
米戦略予算評価センターの構想は、同盟国・友好国に、①「潜り込む不正規軍による攻撃の破砕」、②「同盟国によるA2/ADネットワークの構築」を要請している。日帝・自衛隊の「南西諸島の拠点化」がそれに当たる。安倍政権は敵基地攻撃用の「日本版トマホーク」の開発に踏み込んでいる。
そして米軍は、①「遠距離作戦」②「封鎖作戦」を実施し、長期戦で勝利を追求するとしている。
要する日帝独自の軍拡が、米帝の対中国戦略に不可欠であるということである。そして米帝の予測を超えて戦争が泥沼化し、疲弊すれば、核戦争に行き着くことも明白である。米帝はすでに広島、長崎に原発を投下した経験を持っている。
(写真 ルーマニアに配備された地上イージス)
戦争・改憲・軍拡に突進する極右・安倍
安倍内閣の2019年度防衛予算を見てみよう。
2019年度一般会計総額(概算要求)は102兆円台で 過去最大だ。5年連続100兆円超。来年10月の消費税率10%引き上げを巡る対策経費は「別枠」扱いのため予算規模はさらに膨らむ。
防衛省は約5兆3000億円を要求。18年度当初予算比2・1%増。5年連続で過去最大を更新。第2次安倍政権以降、6年連続で増加。安保関連法、北朝鮮「脅威論」、米中戦争など、改憲と戦争に突進している安倍政権の思惑で防衛予算が肥大化している。
秋田・山口配備計画の「イージス・アショア」2基調達で2352億円。イージス艦搭載予定の改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の購入に266億円。「SM6」調達費として111憶円。F35ステルス戦闘機6機を916億円で追加。
ローン支払いに当たる「後年度負担が2兆708憶円で約4割を占めている。
海自の護衛艦、潜水艦、敵基地攻撃能力をもつ「スタンドオフ・ミサイル」も導入する。宇宙、サイバー、電磁波を扱う電子戦の3分野にも重点的に予算を振り向けている。宇宙分野は大気圏外から宇宙空間を監視(破壊)する人工衛星の打ち上げを視野に調査研究を進める。電子戦では、F15戦闘機を相手のレーダーに捕捉されにくくするための改修を施す。サイバー分野では、自衛隊の専門人員「サイバー防衛隊」を増員する。海自「いずも」の空母改修は見送る。
2018年度のFMS(対外有償軍事援助)による米帝からの武器購入が当初予算の約4000憶円が概算要求で約5000憶円弱に膨らんでいることを見ても、2019年度の防衛予算がさらに肥大化するのは明白。
2030年頃から退役する日米共同開発の空自F2戦闘機の後継機の開発関連では、ロッキード・マーチンがステルス戦闘機F22とF35の電子機器やステルス技術を組み合わせたハイブリッド(混合)型を提案している。1機当たり2億ドル(約220億円)前後の高価格を提示している。F2後継には複数の企業が名乗りを上げているが、防衛省はロッキード案を最有力視している。しかし調達コストが想定より高額。核心技術の開示などを含め日本企業主導の国際共同開発が可能か不透明なため、正式決定の先送りも検討している。代替案としてはF35の追加調達も検討。いずれにしろ防衛予算は天文学的に肥大化するし、すでにしている。防衛予算は1%。トランプの要求どおりに武器を購入し続ければ、米帝が要求する2%への拡大はすぐだ。
防衛費の巨費に見合う効果はあるのか。はっきり言ってない。だが効果がないことが判明した場合、更に確実性を高めるという理屈で防衛費はさらに巨大化していく。
これが軍事の世界だ。核心は軍需産業の利益と、腐敗した利権・賄賂の世界だ。
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◆F2後継機がロッキード案でいけば、90機調達すれば約2兆円だ。
航空自衛隊の戦闘機はF15(約200機)、F4(約50機)、F2(約90機)の3機種のほか、F4後継機のF35A(1機)がある。F2は日米で共同開発され、00年度に導入。現在は空自三沢基地などに配備されている。米中戦争の切迫下、老朽化が進むF2の切り替えが日帝にとって大きな課題となっている
◆日帝の「空母保有計画」がほぼ確定した。ヘリ搭載護衛艦「いずも」型をほぼ原型のまま活用し、垂直離着陸戦闘機「F35B」を搭載する。任務に応じて、F35Bと対潜水艦ヘリコプター「SH60」を積み替える。要するに1隻で空母と対潜水艦戦が主目的の護衛艦という多用途艦とする全容が明らかになった。大軍拡だ。米軍の作戦と一体で艦載機を変更するということだ。
◆アメリカ帝国主義中心のMFOは1979年のエジプト・イスラエル平和条約に基づき、82年からシナイ半島に展開。エジプト、イスラエル両軍の展開や活動状況の調査、停戦監視が主要な任務と謳っている。現在、米、英、仏、伊、豪など12カ国、約1200人の軍人が派遣されている。日本帝国主義は88年以降、「財政支援」で介入している。
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シナイ半島に日本隊(軍)
安倍政権は、エジプト・シナイ半島でイスラエル、エジプトの停戦監視活動をする「多国籍軍・監視団」(MFO)に、陸上自衛隊員の派遣を決定する。
年内に官邸、外務省、防衛省による現地調査団を派遣し、「安全の確保が出来ると判断」したら2019年初頭に司令部要員として陸自幹部数人の派遣を決定する。 安保法に含まれる「改正国連平和維持活動(PKO)協力法」は、①「強制措置」として、「住民・被災民の保護」のための巡回や警護(文民保護)と、他国軍要員を含めた関係者の緊急の要請に応じて行う生命及び身体の保護(駆け付け警護)を任務に追加し、②「国家建設・復興支援」として、国防組織の設立や再建、さらにそれらに必要な教育訓練、立法・行政・司法事務についての助言・指導、刑務所の運営に関する助言・指導・監視などが任務に追加。また、③規定される様々な業務の企画・立案と、そのための調整・情報収集などの任務が実施可能となる。
要するに「国連PKO」としながら「安保関連法」は、「日本隊(軍)」としてその国の立法・行政・司法への独自裁量をもつ法的根拠を与えている。
自衛官を国連PKO司令官として派遣することなども新たなに規定された。また国連が統括せず、国際機関などの要請に応じて自衛隊を派遣する「国際連携平和安全活動」を初めて認めた。来年年明けに司令部要員を派遣するとしているが、次の段階として陸自部隊の派遣が既成事実化されていく。
国際連帯の強化で戦争が始まる前に阻止しよう
戦争を始まる前に絶対、阻止する。止めなければならない。開始された米中戦争の危機は、革命情勢であり、革命に転化できる情勢として成熟している。世界で労働者階級人民の決起も開始されている。階級的労働運動の前進と拠点建設、大行進運動と星野闘争を一体化して勝負する。国鉄・自治体・教育労働者の現場の闘いを軸に全産別で改憲と戦争攻撃に対決し、勝負する。池田自衛隊裁判をともに闘い、「軍服を着た労働者」・兵士と労働者の団結で勝負する。 国際連帯の強化ー国際共同行動、の拡大、改憲・戦争阻止で安倍政権を労働者階級民衆の実力で打倒し、プロレタリア革命運動を前進させよう。 (滝山)