会報 第52号

Rise 第52号 2020年1月10日発行 rise0052.PDF

池田裁判不当判決弾劾! 控訴審勝利へ!

香港デモの全土化と中国スターリン主義の危機

 

(写真 オスプレイ暫定配備反対! 2019・12・1県民集会 木更津市で、県内の労働組合、市民団体ら2千名が集まった)

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自衛官にも人権や生存権がある!

人間が人間らしく生きられる社会を求めて

東京西部ユニオン(元自衛官)杉橋幸雄

池田元3等空曹の請求をすべて棄却

 イラク特措法に基づく自衛隊派兵の一環としてクウェートに派遣され、任務中に負傷した池田元3等空曹が国に損害賠償を求めた裁判で、名古屋地裁(前田裁判長)は、昨年11月26日、原告の請求をすべて棄却する反動判決を言い渡しました。絶対に許すことはできません。
 判決によれば、原告の池田さんの陳述をことごとく「信用できない」として退け、「イラク特別措置法9条は復興支援活動の対応措置を行うにあたっての配慮を求める規定」で「池田さんのマラソン大会への参加は公務に準じた状況下にあるとは言えない」として、負傷によって池田さんが肉体的・精神的にも打撃を受けたことは認めながら、国・自衛隊には一切責任はないと切り捨てたのです。また、暴力行為を伴う退職強要の事実も認定しませんでした。国家の事情で戦場に派兵された自衛官には「人権も生存権もない」と言うのか。ふざけるな!と言いたい。
 派遣先で池田さんは、任務の一環としての体力錬成の「マラソン大会」に参加中に米軍関係の軍用車両に跳ね飛ばされて負傷したのです。米兵と共に数十人の自衛官も走者として参加していました。 しかし、現地自衛隊は具体的な安全対策を何も施していませんでした。にもかかわらず、国・自衛隊側は「米軍主催だったから」「イラク特措法は、そこまでの安全配慮義務を負っていない」と居直り、裁判所もこれを踏襲したのです。断じて許せません!原告の池田さんと弁護団は即刻控訴し、新たな闘いを開始しています。

 「判決」を前にして池田さんは「国家の都合で戦場に送りながら、犠牲になっても泣き寝入りさせられてきたのが自衛官です」「裁判を始めたのは、国が隊員に嘘をついて私のように怪我をしても隠してしまう、自殺者の事も隠蔽されてしまう、こうしたあり方が今後も続けられてはならないと思ったからです」と述べています。

(写真 ろうそく革命 韓国2016年10月)

 改憲は侵略戦争への道

 自衛官の皆さんに問いたい。安倍政権が狙っている憲法9条に「自衛権」「自衛隊」を明記したら「安心して戦場に赴く」ことができますか? わたしたちは9条改憲も戦争も絶対反対であり、絶対に阻止する覚悟です。言うまでもありませんが、9条改憲がなされたら日米安保同盟のもと地球上どこでも派兵は必至です。そして、
すべての国民に「国防」が義務化され、学校での「国防教育」や公務員に対する「募兵業務」も公然と強制され、「徴兵制」も必至です。戦争に反対することが「憲法違反」となってしまいます。そんなことは絶対にあってはなりません。

 9条改憲前でさえ「海外での実任務」が1990年の「湾岸戦争」を契機としてペルシャ湾への掃海艇の派遣や、陸自のPKO派兵、イラク派兵(名古屋高裁では違憲判決)などの「海外出動」が増えています。さらに、安倍政権による2014年7月1日の閣議決定と翌年9月の安保戦争法の成立により、国の都合で海外の危険な戦場・戦域に自衛隊が派遣される機会が格段に増えており、その為の実戦訓練も激しさを増しています。これに加えて、災害派遣も増えており、慢性的な人手不足のもとで任務を遂行する自衛官の皆さんにのしかかるプレッシャーやストレスは尋常ではないと思います。だから、自衛隊志願者が激減し、パワハラが横行し、自衛官の自殺者数も増えているのではありませんか。

池田自衛隊裁判と改憲阻止の闘いはひとつ

 危機にかられた安倍政権・防衛省は、2018年10月、自衛官の採用年齢の上限を28年ぶりに変更し、従来の26歳から32歳へと大きく引き上げました。けれど、これで問題が解決すると思いますか? さらに安倍政権は、中東に「調査・情報収集」との名目で自衛隊を派遣しようとしています。しかも、国会承認は不要とされ、河野太郎防衛相の判断で実施されると言われています。「しかたがない」と思いますか?

 池田自衛隊裁判の判決を持ち出すまでもなく、国や安倍政権は現場で苦闘する自衛官の人権や生存権など微塵も考えていません。むしろ、政権の延命・大資本の延命が第一と考えているのです。都合が悪くなれば自衛隊の「日報隠し」、公文書の隠蔽、改ざん、破棄が常態化し、「桜を見る会」の招待名簿と大もとの「データ」を破棄し、早々と国会を閉会して逃げたではありませんか。国政を預かる当の安倍政権は公職選挙法違反・政治資金規正法違反の疑いについて「説明責任」を果たしていません!こういう連中が「閣議決定」でやりたい放題をやっているのです。絶対に許すことはできません!
 9条改憲は国のかたちを根本から変えるとんでもない攻撃です。絶対に阻止しなければなりません!日本を「戦争をする国」にしてはなりません!池田自衛隊裁判に勝利することと9条改憲阻止の闘いは一体です。自衛官とその家族の皆さんに心から呼びかけます。「国益」の為に殺しても殺されてもなりません!人間が人間らしく生きられる社会をめざして団結して共に闘いましょう!

(写真 ロシア革命-行進する赤軍兵士 1917年11月)

戦争ではなく革命を

 2020年、「戦争か革命か」の歴史を分かつ巨大な階級決戦が国境を越える形で始まっています。「戦争ではなく革命を!」その最焦点こそ東アジアであり、国際連帯を積み重ねてきた日本の階級闘争であり階級的労働運動に他なりません。
 安倍政権に対する根源的怒りが全国で沸騰し、爆発しつつあります。2020年の年頭にあたり、「労働者民衆に国境はない!」「労働者階級(プロレタリアート)の解放は、労働者自身の事業である」このマルクスの言葉をしっかりと胸に刻み、断固として闘い抜いていきたいと思います。(1月1日)

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池田自衛隊裁判 控訴審へ!

国賠請求棄却弾劾 中東派兵と一体の暴挙

池田裁判をともに闘う会

名古屋地裁 国・自衛隊の責任を免罪

 2006年にクウェートの米軍基地に派遣され、基地でのマラソン大会に参加して負傷した元航空自衛隊3等空曹の池田頼将さんが「十分な治療を受けられなかったため身体的、精神的苦痛を受けた」と国に損害賠償を求めた裁判で11月26日、名古屋地裁(前田郁勝裁判長)は請求をすべて棄却する判決を出しました。
 そもそも、2003~09年のイラク・クウェートへの自衛隊派遣そのものが違憲です。そのうえでこの反動判決は、安倍政権の改憲攻撃と一体であり、原告の主張を認めれば自衛隊の海外派兵はすべて破綻するという巨大な危機感が根底にあるということです。

(写真 記者会見で「納得できない」と話す池田さん)

「公務災害ではない」と切り捨て

 判決によれば「イラク特別措置法9条は復興支援活動の対応措置を行うにあたっての配慮を求める規定」で「池田さんのマラソン大会への参加は公務に準じた状況下にあるとは言えない」として、国側に安全配慮義務違反はなかったと判断しています。
 同様に現地で受けた治療も適切だったとして、負傷によって池田さんが肉体的・精神的に打撃を受けたことは認めながら国・自衛隊には一切責任はないと切り捨てたのです。
 イラク特措法9条の安全配慮義務の規定がマラソン大会には及ばないとしたことや、その後のけがの増悪にも責任は負わないとしたことは大問題です。これは、大幅に遅れたものの池田さんの負傷を公務災害として治療の責任を自衛隊自身が認めてきたこととも矛盾します。表向き復興支援を掲げながら現地で米軍支援を行ってきた航空自衛隊は、隊員を送り込むときには、「石ころにつまずいても公務災害」としてきたからです。 特別公務員としての自衛隊員には厳格な服務規律や職務専念義務(自衛隊法52条、57条、60条等)が課せられており、国の安全配慮義務もより厳格でなくてはならないはずです。万全の対策によって負傷等を防止し、万一負傷した場合にはその増悪を防止するために最善の対応をする必要があるのです。判決はそれを真っ向から切り捨てました。〝負傷しようが、死んでも文句を言うな。自己責任だ〟と言っているのです。

 池田さんは「責任を隠蔽(いんぺい)したがっている自衛隊の言い分を、裁判所がそのまま受け入れたら現場の自衛隊員はどんどん追い込まれます」「判決は治療をめぐる不備やいじめを容認し、精神面での安全配慮義務を踏みにじるものであり、このまま終わらせるわけにはいかない」と控訴して闘う考えで、一層の支援を訴えています。
 弁護団は「法廷で主文だけ読み上げて理由に触れることができないことに示されるように、この判決は国民の手でもう一度裁かれる必要がある」「事実認定や判断の誤りについての精査はこれからだが、イラク特別措置法9条の解釈によって自衛隊と国の責任をなかったことにする政治的な判決だ」と原告とともに控訴する方針を固めています。

(写真 愛知県庁前で池田自衛隊裁判の支援を訴え)

控訴審の勝利へ池田さん支援を

 傍聴には60人を超える支援者がつめかけ法廷に入りきれませんでした。報告会の参加者も30人を超え「マラソン大会も含めて派遣中すべてが安全配慮義務だったはず」「池田さんが勇気を持って立ち上がったことで国を追い詰めてきた」と判決を批判する声、池田さんを激励する声が続きました。 安倍政権は、国会承認が不要な「調査・研究」の名目で、海上自衛隊の護衛艦とP3C哨戒機の中東への派兵を国会閉会中に閣議決定し、派兵を強行しようとしています。池田さんの裁判は、日帝の中東侵略に真っ向から立ちはだかる闘いでもあります。池田さんの闘いをしっかり支えるために、裁判費用カンパと池田さんへの激励をお願いします。

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池田3等空曹の派遣されたアリ・アルサレム基地(クウェート)は戦場そのものだった

池田裁判をともに闘う会・会員D

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全自衛官の人権と生存権を踏みにじる判決

 名古屋地裁判決(=2019年11月26日。以下判決)は、事実認定を誤り、違法な暴論で池田元3等空曹の人権と生存権を踏みにじった。24万全自衛官に対して、「自衛隊に歯向かうな、自衛官に生存権などない。お前たちは国家のために死ね」とする判決だ。
 判決は、派遣された自衛隊の「安全の確保」を定めた《イラク復興支援特別措置法》9条に基づく安全配慮義務を「対応措置を実施するにあたっての配慮を求める規定」と切り縮め、違法な認定を行った。
 判決は、「マラソン大会は米軍の主催で、自衛隊は参加する自衛官の安全を確保する義務を負っていなかった」と意図的事実誤認かつ違法な認定を行った。また、「米軍は安全対策をとっていた」と意図的に事実でない認定をした。
 判決は、大型バスにはねられて重症を負ったにもかかわらず、適切な治療が不可能だった現地の医療体制と(敵性証人の)山室証言さえ無視し、「現地で適切に治療されており、直ちに帰国させなければならないものではなかった」と、意図的に事実ではない認定をした。 さらに、症状固定認定判断の明確な誤りを認めなかった。
 最大最悪のパワハラとランク付けされている暴力行為を伴う退職強要の事実も認定しなかった。同様に最悪のパワハラである本人の意に反する配置転換(警務隊通報に対する報復)のパワハラと退職強要の事実も認定しなかった。

《イラク特措法》と違憲の空自活動に触れられず

 判決は、《イラク復興支援特別措置法》と「復興支援」活動に全く触れることができなかった。また、名古屋高裁の違憲判決(2008年4月17日)にも、違憲の空自活動についても、全く触れることができなかった。
 池田元3等空曹のマラソンの際のケガの根本原因は、憲法違反の《イラク復興支援特別措置法》とその実施、憲法に違反して米軍と武器弾薬を空輸していた空自の活動全体の中にある(自衛隊は、米軍基地を借りて違法空輸活動の拠点とし、自衛隊員が生活し、イラク人民を攻撃していたという事実)。米軍基地の共同使用に伴う米軍と自衛隊の矛盾、安保と憲法の矛盾した実態の中で生起したのだ。
 現にサマワはイラク人民から恒常的に攻撃され、デモに包囲され、路肩爆弾を仕掛けられ、イラク特措法に基づく「対応措置」は不可能になり、撤退する以外なくなって撤退した。同じくアリ・アルサレム基地もイラクとクウェート人民の包囲の中にあり、07年にはゲリラ攻撃を受けている。

放射能に汚染された戦場の基地‐アリ・アルサレム空軍基地

 池田元3等空曹が派遣されたクウェートのアリ・アルサレム基地はイラク国境に近く、放射能による汚染がすさまじい。1991年の湾岸戦争では、米・英両軍が、クウェートとイラク南部で、95万個(約320トン)の劣化ウラン弾を使用した。イラク特措法制定過程では、米軍が指摘した汚染情報を川口外務大臣(当時)は無視・隠ぺいした。「非戦闘地域」ということも、「石につまづいて転んでも公務災害」ということもウソだった。それどころか被曝を不可避とする高濃度放射能汚染地帯に、事実を隠蔽して自衛隊兵士を派遣したのだ。
 さらに、空自は同基地を拠点に、Cー130H輸送機3機で、イラクのバグダッド、タリル、アルビルにある飛行場に、武装した米軍兵士と物資、国連機関の人員、人道復興支援物資、陸自の人員と補給物資などを空輸していた。期間中の輸送回数が821回、輸送人員が4万5千人、輸送物資重量は673トンであり、その内輸送人員の63%の27300人が武装した米兵だった。
 アリ・アルサレム基地は、イラク侵略戦争の文字どおりの出撃拠点であり、戦場そのものだった。ここに派遣された池田元3等空曹たち自衛隊兵士の任務、生活―そのすべてが戦場の中にあった。「レクレーション」の名目のもとで行われたマラソン大会も例外ではない。
 池田自衛隊裁判は、戦争の不条理と国家のウソ・ペテンを暴露している。「イラク戦争の真実」は池田元3等空曹の存在と闘いの中にこそある。控訴審を、池田元3等空曹の人権と生存権、そして全自衛官の人権と生存権をかけたものとして闘っていこう。

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【Stray Soldier】のブログより May 13, 2006

※Stray Soldier-陸自第10次群でイラクに派遣された。「普段は空挺隊員」(ブログ文中より)

クウェートからイラクへ

 クウェートからイラク・サマワまでは、自衛隊のC-130輸送機を使用して、クウェートのアリ・アルサレム空軍基地から一路、タリル米軍基地に移動、そこから陸路(車両機動)によりサマワまで移動することになる。
 アリ・アルサレム空軍基地に行く途中、イラク戦争後に放置されたと思われる多数の戦車、榴弾砲が道路脇のゴミ捨て場のような場所に放置されていた。周りにはフェンスを張り巡らされ、クウェート軍が管理しているようだったので、そばまで行って見ることはできなかったが、これらの放置品を見ることによって自分が今、戦場にいるんだという生々しい実感がわいてくる。
 (キャンプ)ヴァージニアから車両で1時間ほど走るとアリ・アルサレム空軍基地へ到着する。アリ・アルサレム空軍基地ではイラク軍が使用していただろうMIGの格納庫に、これまた生々しい空爆の爪跡が残されていた。おそらくバンカーバスターのような爆弾によるピンポイント爆撃の跡であろう。これこそまさに戦争の生々しい傷跡であり、本当にこの地で戦争が行われていたんだと実感することができる。

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香港デモの全土化と中国スターリン主義の危機

滝山

香港デモ、香港区議選・「民主派」が歴史的な勝利で圧勝

 新自由主義に対する怒りが韓国、香港、チリ・南米、米欧、中東イスラエル・イランでも労働運動が爆発し、青年・労働者民衆の怒りは世界で爆発している。これが2020年代の基調である。
 香港デモの中国全土化も避けられないであろう。香港区議選は452議席中、民主派が85%に達する388議席を獲得し、歴史的な勝利をおさめた。改選前、議席の約7割を占めていた親中派は大敗し、両派の立場は完全に逆転した。1997年の中国への返還後、民主派が過半数を取ったのは初めてである。投票率は前回2015年の47%をはるかに上回る71%。中国返還後に実施された立法会(議会)選、区議選においても過去最高である。林鄭月娥率いる香港政府と中国スタ・習近平に真っ向から「ノー」を突き付け、警察の「暴力」追及や普通選挙実施など6項目を掲げ、警察の暴力と対峙・対決しながら抗議を続けてきた学生・青年のデモ活動が、香港労働者市民を獲得し、共に決起していることが示されている。
 各種世論調査では、香港市民の6~7割程度がデモに同意し、その多くが「暴力的な抗議行動」にも理解を示している。選挙結果はその世論調査とも一致する。
 しかし選挙後初の記者会見でも林鄭月娥は学生・労働者市民の要求に応じる考えを示していない。
 区議選前の11月18日、「自由のために!青年の未来のために!命をかけて闘う!」「自由がなければ死もいとわない。仲間たちよ、逮捕も死も恐れるな」。理工大に残った学生らは「絶筆」と称した声明を出した。
 声明は「血と涙を流して学校を悪魔の侵入から守った。何の罪になるのか!」と警察権力・政府と中国・習近平への怒りを噴出させた。11月4日、習近平は上海で林鄭月娥と会見し、香港デモに対し「暴力」での「制圧」を指示した。これを機に抗議活動への暴力的圧力を一段と高め、警察の発砲や大量逮捕、民主派議員の逮捕に踏み込んだ。
 18日未明、学生らが占拠していた香港理工大学に警官隊が突入。大学は「戦場のようになった」(香港メディア)と報じており、18日朝までに「重傷4人含む16~84歳の少なくとも24人が負傷」し、病院に搬送された、とメディアは報じた。
 警察権力は「抵抗」をやめなければ「実弾発射」を行なうと宣言し、実際、実弾3発を撃ち込み、大量の催涙弾発射と放水車での攻撃を続けた。学生は負傷者を出しながら火炎瓶と投石で徹底応戦し、警察の装甲車を実力後退させ、放った矢が警官のふくらはぎを射抜き、警官を後退させた。
 11・20は、理工大で1230人以上が逮捕されている。出てくる者はだれかれ構わず逮捕し、救護活動の学生・労働者まで逮捕した。20日現在で学内には「数十名」が籠城し抗戦している。林鄭月娥と警察は、「最後まで抵抗する学生は全員、暴動罪で逮捕する」と宣言した。だが学生・デモ隊はひるまずに闘った。学生らは「投降しても未来はない。死か、闘うかだ!」と壮絶な決意を表明している。

怒りは『国家と革命』の問題として爆発

 2019年10月23日、逃亡犯条例改正案が正式に撤回された。だが、抗議行動はより非和解的に激化し、拡大した。そもそも学生・労働者市民の抗議運動は、6月9日に起きた100万人規模の平和的デモと、同12日に起きた無許可デモ参加者に対する香港警察の暴力的弾圧=催涙弾発射、実弾の発射(11日)という暴挙から本格化した。抗議行動は7月上旬から「5大要求」へと非和解化し、発展した。10月以降は、香港警察の解体や、同月に施行された覆面禁止法が抗議行動の炎に油を注いだ。香港高等法院(高裁)は11月18日、覆面禁止法は香港基本法に「違反している」との判断を下したが、高裁は22日、政府の一時的取り締まり要求を受け入れ同法規則を29日まで有効との決定を下し、取り締まりを強化した。
 高裁の「違反決定」に対して中国の全人代常務委員会は、「全人代常務委だけが違憲判断できる」と香港に司法介入している。 
 デモ隊の原動力は、香港警察の暴力への怒り、青年、労働者民衆を無視し、問答無用で法案成立を強行する香港政府と中国・習近平への怒りである。
 まさに『国家と革命』の問題として怒りは根底的に爆発する。

(写真 周梓楽さん虐殺に抗議してデモを闘う学生と労働者(2019.11月8日 香港)-燃える世界の闘い-)

若者一人ひとりがリーダー

 抗議行動の根底にあるのが1997年の香港返還以降、徐々に拡大した階級矛盾、格差の拡大、政治システムへの怒りの爆発である。

 (1)周知のように1997年香港返還。鄧小平は、経済都市・香港の独自性を損なわずにゆるやかな形で中国の主権下に置く「方策」を打ち出した。香港人に中国の制度を押し付けず従来の社会体制を50年間保証し(一国二制度)、「香港人による自治の実現(港人治港)」を押し出した。

 (2)「一国二制度」は、その後10年間の世論調査では、「順調」ととらえている数字を示した。2008年に香港大学が18~29歳の青年を対象に実施した世論調査では、自分を「中国人」と考える人が30%近くで、「香港人」と考える青年は約23%である。

 (3)だが中国が台頭した2010年代に入ると中国・習近平の動向が変わる。
 要するに習近平の鄧小平的方策からの転換である。香港では返還前にうたわれた、行政長官の普通選挙による選出などの改革は行なわれず、経済の対中国依存を背景に、中国政府からの政治・メディア分野への介入が強化された。また香港行政長官は「北京の操り人形」といわれ、統治権力は中国政府の出先機関である中連弁(中央政府駐香港連絡弁公室)が掌握し、「港人治港の理念」は形ばかりであることが香港社会ではっきりしてきた。

 (4)2014年、学生・労働者の不満と怒りが爆発し、行政長官の直接選挙による選出を求めた学生運動・雨傘革命が起こる。15年には、反中国的な書籍を出版していた関係者5人が中国の治安当局により中国内地に連れ去られた銅鑼湾事件が起き、さらに、香港独立派や急進的民主派の立法会議員の資格剥奪事件など、「一国二制度」の形骸化を示す出来事が多発した。

 2019年の香港大の世論調査では、自分を「中国人」と考えている青年は27%にまで減少し、「香港人」と考えている青年は過去最高の75%にまで達している。 要するに、わずか10年で青年層の「中国スターリン主義離れ」が激しく進行している。それに拍車をかけたのが「逃亡犯条例改正案」である。
 中国政府による香港支配をより強化させるという怒りが学生・青年、労働者を先頭に香港社会全体を包み込んだ。200万人を超える怒りが行動で香港政府と中国・習近平に叩きつけられたのである。
 各種世論調査では、香港市民の6~7割程度がデモに同意し、その多くが暴力的な抗議行動にも理解を示している。「運動に明確なリーダーが存在しない」と報道されているが、若者一人ひとりが社会変革をめざすリーダーと化している。

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中国・習近平、香港への「全面的統治権」拡大を決定

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中国軍が障害物撤去 初の街頭展開、デモ隊けん制か―香港 (JIJI.COMより)

 

(写真 【2019 年11 月16 日23 時46 分】16日、香港で清掃活動を行中国人民解放軍の駐留部隊【AFP時事】)

 【香港時事】香港に駐屯する中国人民解放軍が16日、デモ隊が残したバリケードや障害物の撤去などの活動に参加した。公共放送RTHKが伝えた。人民解放軍の香港駐留部隊は昨年10月も台風後の清掃に加わったが、6月に大規模デモが起きて以降、街頭に展開するのは初めてとみられる。デモ隊をけん制するとともに、香港市民の反中意識を和らげる効果を狙った可能性もある。
 人民解放軍の数十人は16日午後、九竜地区の駐屯地から外出し、近くの路上で復旧活動に参加。そろいのTシャツと短パンを着用し丸腰だった。路上のブロックや鉄柵などを路肩に片付け、スコップやほうきで小石を除去した。
 RTHKによると、駐留部隊は「自発的参加」を主張し、香港政府は「(駐留部隊の)協力は求めていない」と明らかにした。一部の民主派議員は香港基本法などに反していると指摘し、「市民に解放軍を慣れさせ、徐々に解放軍の行動を合理化することを意図している」と非難した。

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 中国共産党は香港デモの最中の10月28日から31日、第19期中央委第4回総会(4中総)を開催した。最終日に「中国の特色ある社会主義制度の堅持と改善、国家統治体系と統治能力の現代化推進における若干の重大な問題に関する決定」を採択している。
 「決定」は「一国二制度」について言及し、「『一国』を必ず堅持することは『二制度』の前提・基礎」であり、「『二制度』は『一国』に従属」し、そこから派生するものであって、「『一国』の中に統一される」と明記している。
 さらに「『一国二制度』のデッドラインに挑戦する行為はどんなものであっても絶対に許容しないし、国家を分裂させる行為はどんなものであっても絶対に許容しない」とした上で、以下の方針を示している。
※下記「中央」とは、党中央の指導下にある中央政府や全国人民代表大会(全人代=国会)などの中央国家機関を指す。

 (1)基本方針として、

①「 愛国者を主体とする香港人による香港統治、マカオ人によるマカオ統治を堅持する」。
 ここでいう「愛国者」とは、親中派を指す。つまり、民主派などが長官になったり、立法会の過半数を民主派が占めたりすることを認めない方針は不変であるとの宣言である。習近平の1期目中の2014年の雨傘運動の時と同様、いわゆる「真の普通選挙」を導入する気は毛頭ないということだ。

②「中央が(中国)憲法と(香港・マカオ)基本法に沿って特別行政区に対して全面的統治権を行使する制度を整備する」とある。
 中央の「特別行政区に対する全面的統治権」は2014年、中国政府が「香港白書」で初めて出した概念で、基本法には書かれていない。要するに、これが法律の上位にある党中央の重要文書に明記されたことで、「一国二制度」の枠組みは基本法を改正しないまま、「一国を強め二制度を弱める」形で実質的に修正されたことを意味している。

 (2)そしてこの基本方針への取り組むべき課題・政策としては、

①「中央の特別行政区行政長官・主要当局者の任免制度とメカニズム、(基本法で規定された)全人代常務委の基本法解釈制度を改善し、憲法と基本法が中央に与えた各種の権力を法律に沿って行使する」。
 要するに中央が香港に対する統治権の行使を容易にするため、長官人事に対する中央の影響力や全人代常務委の香港に対する司法介入を拡大するということだ。全人代常務委は基本法の解釈権限を持っている。香港各界を代表して長官を選ぶ選挙委員(1200人)選出方法を改悪し、親中派を増やし、また親中派の中でも習政権に従わない財界系の委員を減らすなど構成を変えて中央の指示が確実に実行されるようにするという狙いだ。

②「特別行政区で国家の安全を守る法律制度と執行メカニズムを構築、整備する」。これは香港基本法23条に基づく「反逆」「国家分裂」「外国政治組織との連携」などの政治活動の禁止とそれに実効を与える法と暴力の構築である。

③「行政長官が中央政府に責任を負う制度を整備する」。
 香港基本法43条は、長官は中央政府に責任を負うと規定している。これに関連する「制度の整備」を指しているが、中央は昨年の2月、香港政府に対し、「香港民族党」の活動禁止に支持を表明し、その上で、禁止措置に関して報告を求める異例といえる「公式書簡」を送った。今後、報告義務=中央による統制強化の制度化を狙っている、ということ。

④「香港・マカオ社会、特に公職者と青少年の憲法・基本法教育、国情教育、中国史・中華文化教育を強化し、香港・マカオ同胞の国家意識と愛国精神を強める」。
 これは12年に香港政府が導入を断念した「国民教育」の復活を意味する。「香港人も中国人らしく振る舞え」「世界第2位の経済大国になった偉大な祖国・中国を誇りに思え」という排外教育の強制だ。

⑤「外部勢力が香港・マカオの問題に干渉し、分裂・転覆・浸透・破壊活動を行うのを断固として防ぎ、抑え込む」としている。
 「外部勢力の影響の排除」である。いうまでもなく外部勢力とは米帝である。上記②の政治活動の禁止立法が実現すれば、香港政府は「外部勢力」との結託を理由にして反政府運動や香港の民主独立勢力への規制強化が可能になる、ということ。
 香港政府は、中央からの指示または圧力を受けて、「国家安全条例制定」、「国民教育導入」、民主派を排除する長官「普通選挙」の導入、「逃亡犯条例改正」を試みながらもことごとく失敗してきた。 さらに、今回、デモ取り締まりのため、超法規的な緊急条例(緊急状況規則条例)まで発動し、逆に大きな反発を招いた。いずれも香港人の政治意識や感情を無視した強権と強硬路線の結果だが、4中総会の「決定」はこの路線を一段と強化するもので、火に油を注ぐことになるのは明白である。
 香港では、「雨傘運動」をきっかけに民主派から分離する形で「本土・自決派 (本土派と自決派)」と呼ばれる反中勢力が台頭している。この勢力は「一つの中国」に反対もしくは懐疑的という点で、「一つの中国」の枠内で民主化を目指す伝統的な民主派とは大きく異なるのであろう。本土・自決派(特に本土派)は警官隊との衝突も辞さない街頭行動を重視している。いうなれば「香港民族主義者」である本土派は中国ではなく香港を自分たちの「本土」と見なし、組織によっては香港独立を主張している。民族主義というより民主主義の徹底を追求する「自決派」は香港の「民主自決」を唱えている。
 習近平は香港デモに対して青年・労働者が求める改革の道とは文字通り真逆の徹底暴力による鎮圧の道を選択し、決定している。これが中国・習近平スターリン主義の本質であり、反労働者性だ。

(写真 教育労働者を先頭に3万人のデモ(2019.10月21日 米シカゴ)-燃える世界の闘い-)

(写真 「関西生コン支部弾圧許すな!」(2019.11月16日 大阪・西梅田公園) -燃える世界の闘い-

(写真 150万人の歴史的ゼネスト(2019.12月5日フランス)-燃える世界の闘い-)

香港デモは、近い将来、反帝・反スタ革命へ進まざるをえない

 仮に香港理工大が警察暴力で制圧されたとしても、デモは区議選の歴史的大勝を経て再び噴き出す。それは「4中総」の決定・方針から見ても不可避である。選挙後、すでに80万人のデモが行われている。香港デモ鎮圧に向け今後の中で、人民解放軍または人民武装警察部隊の暴力が行使された場合、香港革命の炎はさらに、一段と高く燃え盛り、その炎は世界の青年・労働者から支持され、闘いが中国本土に拡大するのは不可避であろう。香港デモへの暴力的鎮圧は1989年の天安門事件のときよりもはるかにハードルは高くなっている。人民解放軍がデモに対し戦闘服ではなくTシャツと半ズボンでしか登場できないところにそれが現れている、といえよう。

(写真 地下鉄運賃の値上げに反対し、武装した国家憲兵による暴力的弾圧に立ち向かう学生たち(2019.10月18日 チリ)-燃える世界の闘い-)

中国スターリン主義の「一帯一路構想」の目的

 「一帯一路構想(2013年)」は没落米帝主導の「世界秩序」に対抗する中国スタ主導の「世界秩序」の構築を目的としており、その秩序構築の中には、海外展開のための「軍事インフラ」、つまり、中国人民解放軍が使用する港、空港、鉄道・道路などの確保も入っている。中国は一帯一路構想の「デジタル・シルクロード(DSR:Digital Silk Road)」化に向けたインフラ建設の動きを強め、次世代「5G」をめぐり米帝と死活を賭けた争闘戦を激化させている。南中国海・東中国海の人工島建設と軍事拠点化は一帯一路構想と一体である。

 (1)一帯一路構想についての解釈はさまざま出ている。同構想は、米帝主導の世界秩序に対抗する中国スタの「国家戦略」である。そもそもスターリン主義は帝国主義の世界支配という「世界秩序」を前提にして、その秩序の枠中で、一方では労働者の決起を暴力的に抑え込み、経済的・軍事的に発展・台頭してきた「発展途上国」(米帝ニクソンからオバマ政権までの規定)である。
 李向陽(中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院院長)は、一帯一路構想とは「古代シルクロードを原型とし、インフラによる相互連結を基礎とし、多元的協力メカニズムと『義利観』(論語)を特徴とし、運命共同体の構築を目標とする発展主導型の地域経済協力メカニズムである」と定義し、そして中国の「価値観と理念を諸外国と共有する」ことにあると規定している。
 従来の「地域経済協力メカニズム」では、通常、インフラ整備による関係国間の相互連結を前提とはしていない。「貿易と投資の自由化」をその中核的な目標としている。
 要するに、一帯一路構想はインフラ事業・整備・建設をとおして「相互連結」を強め、沿線国の経済成長を促すだけではなく、沿線国間の貿易・投資自由化をも促進していきながら、中国の価値観と理念を共有する構想である。そのためには「各国の事情」に合わせて「異なる協力方法」を採ることになる。つまり、「多元的協力メカニズムを構築できる」というのが一帯一路構想の「突出した特徴」として強調されている。「白い猫であれ、黒い猫であれ、ネズミを捕ればよい猫だ」(1962年7月)という鄧小平の理念と通底しているということ。

 (2)「義利観」について
 これは「一帯一路」の中核的な理念とされている。「義利観」は中国儒教が掲げた「治国の理念」。「義」は理念・道義・倫理。「利」は利益・互恵・「ウィンウィン」。孔子をはじめ、歴代の儒教らは、「利」よりも「義」を優先すべきとの基本理念を強調してきた。中国の指導者は儒教文化の「義利観」を継承・発展させ、「国際交流に応用」し、「中国の特色ある経済外交の理念」としてきた。「義利観」に則ることは、中国が経済的・軍事的台頭を実現するための「中国の責任」としている。

 (3)一帯一路構想が最終的に目指すのは、「責任共同体、利益共同体」を土台とする「運命共同体の構築」である、としている。
 要するに中国スターリン主義による「世界秩序」の構築である。中国スタが掲げる運命共同体という目標は、その内包するものも外延するものも、資本主義・新自由主義的な従来のものの超越を目指している、といえる。「一帯一路」における「五通」(政策面の意志疎通、インフラの相互連結、貿易の円滑化、資金の融通、国民間の相互交流)を例にとると、インフラの連結や貿易円滑化、資金の流れの強化にとどまらず、経済分野以外を含む「政策協調」や労働者民衆の「心を互いに通い合わせる」ことにも言及している。
 習近平は2017年1月18日、スイスで「人類運命共同体を共同構築する」と題する基調演説を行なっている。その演説で、人類運命共同体構築という偉大なプロセスを共に推進し、対話と協議、共同構築と共有、協力とウィンウィン、交流と相互参考、グリーン・低炭素を堅持し、恒久的に平和で、普遍的に安全な、共に繁栄し、開放・包摂的な、クリーンで素晴らしいバラ色の「世界を築く」ことを主張した。また「平等な扱いを受け合い、互いに話し合い、互いに理解を示し合うパートナー関係を築くことが、運命共同体を実践する主要な方法であり、公正・公平で、共に建設し、共に享受する安全な構造を築くことが、運命共同体を築くうえでの重要な保障」である、としている。この「人類運命共同体構築」というプロセスにおいて一帯一路構想は「世紀のプロジェクト」として位置付けられている。

 (4)中国ではエネルギー・プロジェクトが海外での一帯一路関連の建設および投資の大部分を占めているが、エネルギー部門以外にも、輸送部門における一帯一路関連の建設プロジェクトや商品への投資の重視を押し出している。
 これは、エネルギー供給を確保し、海外との商品貿易と輸送の接続性を改善・確保するという中国スタの長年の野望と合致する。
 2013年10月から19年6月まで、現在の137ヵ国すべてに関係する9500万ドルを超える一帯一路案件を集計すると、建設プロジェクトは4320億ドル、投資総額は2570億ドルとなっている。商業的および政策的理由から、一帯一路では建設が投資を上回っている。要するに投資ではなく、建設が一帯一路の主要な経済活動になっている。これは一帯一路構想と一致している。
 一帯一路諸国は開発途上国で、「収益性の高い資産をほとんど持たない」から商業面では、買収する額が少なくなる。政策面では、中国の海外非営利建設推進は国有企業内の「過剰設備問題の解決」を目的に利害を貫徹している。国有企業は、一帯一路の枠組みの内外を問わず、グローバルな契約の圧倒的多数を担っている。国有企業を失敗させたくないという中国の姿勢は、肥大化した企業にビジネス・プロジェクトを提供する必要性を生じさせ、ひいては世界的な建設プロジェクトの継続的な流れを生み出している。
 だが、過去数年のデータと比較すると、2019年上半期の一帯一路建設プロジェクトの件数は40%減少し、資金量はほぼ140億ドル減少している。この3年間、上半期においては平均83件の建設プロジェクトがあった。しかし、2019年の上半期には58件しか報告されていない。要するに2018年6月から2019年6月までに新たなパートナー諸国として62カ国が加盟しているが、建設プロジェクトとしては伸びていない、ということ。原因は中国経済の後退と一体で資金不足が壁になっていることを示していると考えられるが、「国家戦略」としては長期戦略として構想されている。

(写真 学生と連帯する「あなたと一緒にランチ」行動(2019.11月28日 香港)-燃える世界の闘い-)

(写真 「5大要求」のボードを手に80万人がデモ(2019.12月8日 香港)-燃える世界の闘い-)

米中戦争

 米中通商協議対立は非和解になっている。昨年12月、延びていた「第一段階」の合意が報道されているが米中での食い違いが表面化している。中国は米帝が要求する中国経済の構造改革は拒否し、米帝は知的財産権や技術移転といった核心問題に対応しない通商合意での関税撤廃を拒否している。米中それぞれの要求が拡大し、対立している。
 さらに中国の香港デモに対する暴力的鎮圧をも口実とした争闘戦がある。昨年11月、トランプは「香港人権・民主主義法案」に署名し、同法を成立させ圧力を加えている。米議会は香港警察に催涙ガスや催涙スプレー、ゴム弾、スタンガンなど特定の軍用品の輸出禁法案も全会一致で可決。
 中国は、香港人権法案の成立に対抗し、「強力な報復措置」を宣言している。米中貿易戦争が緊迫し、国内経済の成長率がここ数十年で最低に落ち込んでいる中国にとって香港デモは米中争闘戦、米中戦争を激化する火薬庫そのものに転化している。
 中国は、一昨年トランプが米中貿易戦争の口火を切って以来、中国の対抗措置はほぼ報復関税に限定させてきた。米帝は、台湾への武器売却や新疆ウイグル自治区の人権侵害を理由とした制裁、華為技術(ファーウェイ)のブラックリスト入りなど関税以外の措置も打ち出してきたが、これについて中国は報復を警告しつつも対抗措置の実施には至っていない。だが香港人権法案の成立は中国スタを追い詰め、関税戦争を超えたレベルでの対抗措置へ踏み込む可能性がある。だがトランプも追い込まれている。ホワイトハウスの対立に加え、今年は大統領選を控え、中国との合意で接戦州の農産物を中国が大量に購入しないと再選も怪しくなるところに追いこまれている。

(写真 国会近くの幹線道路をせき止め開催された全国労働者大会。民主労総は労働改悪粉砕へ決意を固めた(2019.11月9日 ソウル)-燃える世界の闘い-)

(写真 民衆大会に2万人。「GSOMIA即時廃棄!」(2019.11月30日 ソウル)-燃える世界の闘い-)

米日韓同盟、破綻の危機

 韓国・文政権が在韓米軍駐留費負担の5倍超の50億ドル増額を拒否し、トランプは報復措置として在韓米軍の1旅団の撤退を示唆した。
 在韓米軍は約2万8500人、1旅団は通常では約3000人から4000人。米国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表(国務省ナンバー2)は、「(同盟国は)いかなる国のただ乗りも意味しない。韓国とは経費分担を巡る厳しい交渉のさなか」で、負担増額は既定方針としている。安倍政権に対しても在日米軍駐留経費負担の4倍化を突きつけている。
 日韓GSOMIAが失効の危機にたたきこまれた。安倍の「半導体は安全保障に直結する戦略製品」論に対し、文在寅が日韓GSOMIAの解消を打ち出し、それに米帝が「再三の警告」を発していた。米帝トランプは、「GSOMIA失効」ならば、韓国の半導体産業をターゲットにし、韓国経済と軍事面でも韓国・文在寅政権に、打撃を与えることを表明していた。
 日米の韓国・文在寅政権への圧力は、文政権と韓国ロウソク革命勢力の解体・圧殺攻撃である。韓国の労働者民衆にとって、日米韓軍事同盟の粉砕は「生きさせろ!」の叫びと一体の切実な課題だ。

米帝の中東・イスラエル支配の危機

 昨年9月のやり直し国会選挙で第1党になった野党・中道政党連合「青と白」代表のガンツ元参謀総長が20日、リブリン大統領から指示された組閣断念を表明。与党の右派リクードのネタニヤフ首相は9月下旬、ガンツより先に大統領から組閣要請を受けたが、過半数の支持を得られず、10月に組閣を断念した。
 要するに米帝のイスラエル政策の破綻が噴出している。トランプがイスラエルの占領地ヨルダン川西岸のユダヤ人入植活動を「国際法に違反しない」と容認し、ネタニヤフが打ち出した「西岸の一部併合」を後押しする姿勢を示した。安保理がイスラエルの入植活動を「決議違反」との見解を改めて発表。
 英仏帝など欧州5カ国は安保理会合前、入植活動は「国際法違反で、2国家共存の実現性を損なう」との共同声明を発表。安保理の非常任理事国10カ国も同趣旨の共同声明を会合後に発表。中東支配の破綻とパレスチナ問題で米帝トランプが孤立を深めている。(※ネタニヤフ起訴)
 新自由主義の破綻と共に世界は革命情勢に突入している。これに階級的労働運動の戦略的前進で応えていこう。

 

(写真 国際連帯の力で安倍を倒せ!3900人が団結【2019年11月3日 東京・日比谷野外音楽堂)】-燃える世界の闘い-)

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「自衛隊明記の『改憲』の狙い」

 自衛隊の危機と矛盾は、慢性的な人員不足と近年における志願者数の急減に如実に現れている。
 防衛省は18年10月、自衛官の採用年齢の上限を28年ぶりに変更し、従来の26歳から一気に32歳へと大きく引き上げた。安倍政権による2014年7・1閣議決定と翌年9月の安保戦争法の成立により、集団的自衛権の行使を含むあらゆる戦争行為が「合法化」されたことで、若い世代の志願者が急激に減少したことが背景にある。
 自衛官候補生試験の応募者数で見ると、13年の3万3534人に対し17年は2万7510人に激減。18年度には、防衛省の採用計画数9882人に対し、実際に採用できた人数は7075人(19年3月末現在)で計画の7割程度にとどまった。陸海空ともに5年連続で計画を下回るという異常事態だ。特に安保戦争法で米艦防護などの任務が大幅に拡大される海自は、計画の59・9%しか採用できなかった。

 17年3月31日現在で、自衛官の定員24万7154人に対し、現員は22万6789人で充足率91・8%と1割近くも定員割れとなっている。最前線で戦闘任務などを担う実戦兵力としての陸士・海士・空士の充足率は73・7%まで下がる。実際の戦争では、兵員の3割を失った部隊は組織的戦闘が不可能となり、事実上の「全滅」とみなされる。自衛隊は戦う前から全滅していると言っても過言ではない状態なのだ。
 これでは日本帝国主義の延命のための本格的な侵略戦争はできない。安倍はそのことに激しく危機感を募らせ、こうした状況を突破するために「自衛隊明記の改憲」を狙っているのだ。その先にあるのは本格的な徴兵制の導入である。
 歴代日本政府は憲法9条をなし崩しに破り、日米安保の強化と一体で自衛隊の増強を進めてきた。1991年湾岸戦争後、機雷掃海部隊のペルシャ湾派兵をもって自衛隊の海外派兵が始まると、歴代政府は憲法9条を残したままで、PKO(国連平和維持活動)派兵やアフガン戦争支援のためのインド洋派兵、「復興支援」と称したイラク派兵、「海賊対策」を口実としたソマリア派兵などを次々と強行。それに対する憲法違反の疑義を問われるたびに「戦闘地域への派兵ではない」「米軍の後方支援はしていない」「付近で戦闘行為はなかった」などとうその説明を重ねてきた。だからこそ、池田元3等空曹のように海外派兵任務中の負傷者が出ると、徹底的な事件の隠ぺいと口封じ、パワハラ・退職強要などを繰り返したのである。
 安倍・自民党の改憲の狙いは、憲法9条の制約から自衛隊を「解放」し、「自衛の措置」と称した自衛隊のあらゆる戦争行為を合憲化することにある。そのような自衛隊の維持・増強を憲法上の義務として全社会に強制し、青年を戦場に動員しようとしている。
 安倍政権は改憲策動と並行して、海上自衛隊の新たな中東派兵を閣議決定しようとしている。池田裁判を支え、自衛隊員やその家族の怒りの声とつながり、侵略派兵阻止へ闘おう。改憲・戦争阻止!大行進を全国で拡大しよう。